『もう一度だけ会えたなら、ぼくとわたしは─』(通称・ぼくわた)の発売を記念して、本作の成り立ちや前作から引き継がれるテーマ、そして創作の裏側などをインタビュー。この4月に幻冬舎編集者となり、上司のお手伝いという形で本作に関わらせていただいた私、新米編集者のKが、著者の越尾圭さんにお話を伺いました。第2回となる今回は、執筆中に書いていて楽しかったシーンや、お気に入りのキャラクターなど、創作の裏話をお聞きします。

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越尾さんの意外なお気に入りキャラは“あの人”
新米K 本作の執筆中、書いていて楽しかった場面や、お気に入りのキャラクターを教えてください。
越尾 全体的にとても楽しく書けたのですが、やっぱり明里の高校生活のシーンは書いていて特に楽しかったですね。彼女に新しい友達ができたり、陸上部で大会に出場して力一杯走ったりするシーンなんかがお気に入りですね。
新米K まさに青春といった、とても素敵なシーンですよね。
越尾 あとは、作中で航平が小説家として「どんな作品を書いてきたか」といった、バックボーンを考えるのも楽しかったです。それと、私は各章の章タイトルを考えるのが結構好きなのですが、今回はプロットの段階で全て考えていて、そのまま原稿に落とし込みましたね。
新米K プロットの段階で章ごとのタイトルが決まっていたからこそ、物語全体の軸が全くぶれず、世界観に引き込まれる説得力があったんだなと納得しました。登場人物の中だと、誰が一番書きやすかったですか? やはり、ご自身と同じ「小説家」という職業である十和田航平でしょうか。
越尾 おっしゃる通り仕事上の共通点が多いので、自分と重ね合わせやすいという意味では、書きやすかったですね。
新米K 前作から登場している石黒さんも、良いキャラクターですよね。
越尾 石黒さんも、書いていて本当に面白いキャラクターです。読者の方からも「石黒さんが好きです」と言っていただくことが多くて。
新米K 第一印象は仕事に厳しくて少し怖い上司って感じですけど、基本的には良い人ですよね。
越尾 そうなんです。根は真っ直ぐで優しい人なんですよね。実際、一緒に仕事をしたいかと言われると、そうでもないですけど(笑)。
ボツ案は、潜入して証拠探し?「10年前の奇跡」の証明に試行錯誤
新米K 執筆する上で「ここは難しかったな」と感じたシーンはどこですか?
越尾 明里に10年前に起きた「入れ替わりの奇跡」を真実として信じてもらうプロセスですね。そこは一番頭を悩ませました。詳しくはネタバレになってしまうので言えないのですが、当初は、明里が航平の部屋に忍び込んで、押し入れを探って証拠を見つける……みたいな展開も考えてみたのですが、それはちょっと違うなと(笑)。
新米K 確かに、少しサスペンス寄りになってしまいますね(笑)。
越尾 そうなんです。ただ、10年という歳月が紡いできた登場人物たちの想いをうまく物語に落とし込み、最終的に現在の展開へと落ち着かせることができました。
新米K ネタバレになってしまうので詳しく言えないのがすごく悔しいですが、あの展開は読んでいて本当に惹き込まれました。航平の確かな成長を頼もしく感じる一方で、伝えられたことが真実かどうなのか葛藤する明里の姿にも、すごく心にくるものがありました。
越尾 10年経っていますからね。前作の冒頭で26歳だった航平も、今作では37歳になっています。30代後半ならではの落ち着きや、大人だからこそ抱える葛藤のようなものが、あのシーンの彼の行動にはしっかりと出ていると思います。そういったものが航平の行動に表れたからこそ、高校生の明里の等身大の葛藤と響き合って、あの印象的なシーンが生まれたんだと思います。

