リアルでほろ苦いサイン会の「裏側」
新米K 私個人としては、物語の始まり、「サイン会」のシーンもすごく印象に残っています。なかなか人が来ないサイン会の様子がリアルかつユーモラスに描かれていて面白かったのですが、あれは何か想定されていたイメージがあったのですか?

越尾 あれですね(笑)。「これって実体験なんじゃないか?」って読者の方に思われちゃうかもしれないんですけど。
新米K 実際、作中の設定としてはどれくらいの規模感をイメージしていたのでしょう。
越尾 私の想定としては、サイン会の時間はだいたい1時間から1時間半くらいで、実際に足を運んでくれた一般の読者の方は7、8人というイメージです。航平としては、20人とか30人くらい来てくれたらものすごくありがたいな……と期待していた、という感じですね。
新米K リアルなほろ苦さがありますね。でも、その7、8人の中に身内である航平の彼女の西崎日菜乃に元上司の石黒さんが混ざっているという展開も含めて、クスッと笑えてどこか愛おしいシーンでした。
美味しいパンは欠かせない。越尾さんの執筆中のモチベーション
新米K 最後に少しだけ、越尾さんの執筆ルーティンなどプライベートな部分も伺いできればと思います。執筆中のモチベーションを保つために、これを食べたり飲んだりすると捗る、というものはありますか?
越尾 私はとにかくパンが大好きなので、美味しいパンを常備しています。2日に一度のペースで、近所にあるお気に入りのパン屋さんを何軒か巡って、買ってきたパンを食べながら執筆に励んでいます。

新米K スーパーのパンとかではなく、こだわりのパン屋さんのパンなんですね。
越尾 そうです、歩いていける範囲に良いパン屋さんがあるんです。あとは、作業中に音楽をかけると集中できますね。実際は全然耳に入っていないことも多いのですが、空間に音が流れていることが大事ですね。
新米K ちなみに、どんなジャンルの音楽を聴かれるのですか?
越尾 ジャンルはバラバラですね。昔は洋楽をたくさん聴いていたのですが、最近は日本のインディーズ系のバンドをよく聴いています。ただ、インディーズ系って「あ、このバンドすごくいいな!」と思って熱心に聴き始めると、すぐに解散しちゃったり、そもそも解散していたりすることがちょくちょくあって。「ああ、やっぱり音楽の世界も厳しいんだな」と思いますね。
新米K 確かに厳しい世界ですね。でも、それだけパンがお好きなら、いつか越尾さんの「パン屋さん」を舞台にした小説なんかも読んでみたいです。
越尾 パン屋さんの話、ぜひ考えてみたいですね! パンの種類の数だけ短編のストーリーが書けそうな気がします。
新米K それはぜひ形にしていただきたいです。『ぼくわた』でも登場人物たちのやり取りに何度も心を動かされたので、あの温かい空気感のまま、美味しいパンを組み合わせることで、どんな魅力的な掛け合いが生まれるのか、想像が膨らみます。最後になりますが、今回は貴重なお話をたくさんお聞かせいただき、本当にありがとうございました。
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次回は、前作『ぼくが生きるということは、きみが死ぬということ』と『ぼくわた』のロケハンや、物語を通して越尾さんが伝えたい「想い」についてインタビューをさせていただきます!

