「食後に異常に眠くなる」「食後だけ集中できない」「急にだるくなる」「動悸(どうき)がする」――こうした症状には、食後の急激な血糖変動が関係している場合があります。また、糖尿病や血糖コントロールの異常が隠れていることもあるため、注意が必要です。今回は、食後の不調と血糖値の関係について、おばな内科クリニック院長の川名部先生に聞きました。
※2026年5月取材。

監修医師:
川名部 新(おばな内科クリニック)
聖マリアンナ医科大学卒業。同大学病院では代謝内分泌を主として、糖尿病や生活習慣病を専門に経験を重ねる。2023年4月より川崎市中原区にある『おばな内科クリニック』を継承し、院長を務める。日本内科学会認定医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医、臨床研修指導医
≫【一覧でわかる】食後の強い眠気・だるさは『血糖値スパイク』が関係している?食後の不調と血糖値スパイク
編集部
食後に眠くなってしまいます。普通の反応でしょうか?
川名部先生
多少の眠気であれば、睡眠不足や食事内容などで生理的な反応として見られることもあります。一方で、食後に強い眠気やだるさが出る、集中できない、動悸がするといった症状を繰り返す場合、一部の人では、食後の血糖変動が関係している可能性があります。
編集部
食後の血糖値変動によって、なぜ眠気やだるさが起こるのでしょうか?
川名部先生
インスリンというホルモンが関係しています。食後に血糖値が急激に上昇すると、それを下げるたさきめにインスリンが分泌されます。すると、上がった血糖値が今度は急に下がることがあります。この食後の急な上昇と低下、つまり血糖値の振れ幅が大きい人ほど、強い眠気やだるさ、集中力の低下などを自覚しやすくなります。
編集部
血糖値が上がるだけでなく、下がることでも症状が表れるのですね。
川名部先生
はい。食後にインスリンが過剰に分泌され、血糖値が下がりすぎる状態を「反応性低血糖」と呼びます。人によっては、冷や汗、動悸、イライラ、手の震え、強い空腹感などを伴うこともあり、「甘いものを食べた後に逆に調子が悪くなる」という形で自覚する人もいます。
編集部
健康診断で異常がなくても、血糖が急激に上下してしまうことがあるのでしょうか?
川名部先生
あります。一般的な健康診断では空腹時血糖やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー/一定期間における血糖の平均的な状態を反映する指標)を確認することが多いため、食後だけ大きく血糖値が変動しているケースは見つかりにくいことがあります。「食後だけ異常に眠い」「午後になると集中できない」といった症状が続いている場合は、食後血糖の問題が隠れている可能性があります。
糖尿病とはどんな病気?
編集部
改めて、糖尿病とはどのような病気なのでしょうか?
川名部先生
血液中のブドウ糖、つまり血糖が慢性的に高くなる病気です。通常、血糖値はインスリンというホルモンによって調節されています。しかし、インスリンの分泌量が不足したり、うまく働かなくなったりすると、血糖値が高い状態が続くようになります。
編集部
糖尿病になると、どのような症状が出るのでしょうか?
川名部先生
代表的な症状としては、喉の渇き、多尿、体重減少、疲れやすさなどがあります。ただ、初期には無症状のことも少なくありません。一方で、「何となくだるい」「食後に強い眠気がある」「集中力が続かない」と感じる人もいます。そのため、なかなか受診に結び付かず、初期の糖尿病が見過ごされているケースも少なくありません。
編集部
糖尿病は、なぜ怖い病気といわれるのでしょうか?
川名部先生
血糖値が高い状態が長く続くことで、全身の血管が少しずつ傷ついていくためです。特に細い血管への影響によって、網膜症、腎症、神経障害といった合併症が起こりやすくなります。さらに、動脈硬化が進行することで、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高くなります。症状がないまま進行することもあるため、早期発見・早期対応が重要です。
編集部
糖尿病予備群の段階でも、注意が必要なのでしょうか?
川名部先生
必要です。糖尿病予備群の段階でも、食後高血糖や血糖値スパイクが起こっていることがあります。この段階では、まだ生活習慣の改善によって正常に近い状態へ戻せる可能性もあります。ただし、放置すると徐々に血糖コントロールが悪化し、糖尿病へ進行していく場合もあるため、早めに生活習慣を見直すことが大切です。

