ネフローゼ症候群は、尿へ蛋白が多く漏れ、血液中の蛋白が減ることでむくみを起こす疾患です。原因は一つではありません。腎臓の糸球体そのものに病変がある一次性と、糖尿病や膠原病など別の疾患に伴う二次性に分けられます。原因の違いは、検査の進め方や治療方針にも関わります。まぶたや足のむくみ、急な体重増加、尿の泡立ちが続く場合は、尿検査で蛋白尿の有無を確認することが大切です。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
ネフローゼ症候群の特徴と発症のしくみ

ネフローゼ症候群とはどのような病気ですか?
ネフローゼ症候群は、腎臓から尿へ蛋白が大量に漏れる病気です。血液中のアルブミンが減るため、血管の中に水分を保ちにくくなります。その結果、まぶたや足などにむくみが現れます。成人の場合は、尿蛋白が1日3.5g以上が持続し、血清アルブミン値が3.0g/dL以下に下がることが診断の目安です。むくみや脂質異常症も参考になる所見です。ただし、数値だけで原因まで決まるわけではありません。尿検査、血液検査、腎機能、全身状態を併せて判断します。原因を調べるために、腎生検が検討されることもあります。
参照:
『ネフローゼ症候群』(順天堂大学医学部附属順天堂医院)
『一次性ネフローゼ症候群(指定難病222)』(難病情報センター)
ネフローゼ症候群ではどのような症状がみられますか?
代表的な症状はむくみです。朝はまぶたが腫れぼったくなり、日中はすねや足首がむくみやすくなります。水分が身体にたまるため、短期間で体重が増えることもあります。尿の泡立ち、だるさ、食欲低下、腹部の張りを伴う場合もあります。進行すると胸水や腹水がたまり、息苦しさや強い腹部の張りにつながることがあります。ネフローゼ症候群は、血液中の脂質が増えやすくなります。血液が固まりやすい状態を伴う場合もあります。感染症や腎機能低下につながることもあるため、むくみの程度だけで状態を判断することはできません。
ネフローゼ症候群はどのような仕組みで起こるのか教えてください
腎臓には、血液をろ過して尿を作る糸球体があります。糸球体は、老廃物や余分な水分を尿へ出します。一方で、血液中に必要な蛋白は体内に保つ働きがあります。糸球体のろ過機能が障害されると、アルブミンを中心とした蛋白が尿へ漏れます。血液中のアルブミンが減ると、血管内に水分を保ちにくくなります。水分は血管の外へ移動し、むくみとして現れます。
身体は血管内の水分不足を補おうとして、塩分や水分をため込みやすくなります。そのため、むくみがさらに強くなることがあります。蛋白の低下に反応して肝臓で脂質の産生が増え、脂質異常症につながる場合もあります。
ネフローゼ症候群の主な原因

ネフローゼ症候群の原因にはどのような種類がありますか?
ネフローゼ症候群の原因は、一次性と二次性に分けて考えます。一次性は、明らかな全身性の原因がなく、腎臓の糸球体の病変として起こるものです。代表的な疾患には、微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、巣状分節性糸球体硬化症などがあります。二次性は、腎臓以外の病気や薬剤などに伴って起こるものです。糖尿病性腎症、ループス腎炎、アミロイド腎症、感染症、薬剤、悪性腫瘍などが原因になる場合があります。
一次性と二次性では、治療の考え方が異なります。一次性は病型に応じて尿蛋白を減らす治療や免疫を調整する治療を行います。二次性は、尿蛋白への対応に加えて、背景にある病気の治療も進めます。原因を見極めるために、尿検査や血液検査だけでなく、必要に応じて腎生検や全身の検査を行います。
参照:『一次性ネフローゼ症候群(指定難病222)』(難病情報センター)
一次性ネフローゼ症候群の代表的な疾患を教えてください
一次性ネフローゼ症候群の代表的な疾患には、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎があります。微小変化型ネフローゼ症候群は、急に強い蛋白尿が出ることがあります。微小変化型は、腎生検で採取した組織を光学顕微鏡でみても、大きな変化を確認しにくい病型です。小児に多い病型ですが、成人にも起こります。
巣状分節性糸球体硬化症は、糸球体の一部に硬化した病変が生じる病気です。尿蛋白が多く、腎機能の低下につながる場合があります。治療への反応には個人差があります。
膜性腎症は、糸球体の毛細血管壁に免疫反応が関わる病気です。成人の一次性ネフローゼ症候群でみられることが多い病型です。感染症、薬剤、悪性腫瘍、膠原病に伴う二次性の膜性腎症もあります。
膜性増殖性糸球体腎炎は、血尿や低補体血症を伴うことがあります。一次性として起こる場合もありますが、感染症や免疫の異常など別の背景を持つ場合もあります。
参照:『エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2020』(日本腎臓学会)
二次性ネフローゼ症候群はどのような病気が原因になりますか?
二次性ネフローゼ症候群は、腎臓以外の病気や薬剤が背景にあります。代表的な原因は、糖尿病性腎症、ループス腎炎、アミロイド腎症、IgA血管炎に伴う腎症などです。感染症は、B型肝炎、C型肝炎、HIV感染症などが関わる場合があります。悪性腫瘍に伴って膜性腎症を起こすこともあります。薬剤は、痛み止めとして使われる非ステロイド性抗炎症薬などが関係する場合があります。
二次性は、腎臓だけを調べても原因にたどり着けないことがあります。血糖、自己抗体、感染症、悪性腫瘍の評価、服薬歴の確認などを組み合わせます。背景疾患を把握できると、治療方針を立てやすくなります。

