自己免疫性ノドパチー(自己免疫反応によって手足のしびれや筋力低下が起こる指定難病)と診断された森さん。2025年2月、起床時に突然両足先のしびれを感じたことが、長い闘病生活の始まりでした。健康と体力に自信があったはずなのに――。当たり前にできていたことができなくなる現実と向き合いながら、治療とリハビリテーションを続ける森さんに、発症から診断、治療、現在の生活までの経緯について聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年11月取材。
体験者プロフィール:
森 憲彦さん(仮称)
1973年生まれ、岐阜県在住。妻と子供2人の4人家族。2025年2月、起床時に両足先のしびれを発症。糖尿病による末梢神経障害も考えられたため、約1カ月後にかかりつけ医を受診し、紹介された市民病院での神経伝導検査・髄液検査を経て、発症から約3カ月後に慢性炎症性脱髄性多発神経根炎(CIDP)と診断される。2度の免疫グロブリン製剤による治療では改善せず、大学病院に転院した結果、希少な「自己免疫性ノドパチー(抗NF155陽性)」と判明。現在は血漿(けっしょう)交換治療と注射薬の治療、リハビリを続けながら病気休暇中。
健康だと思っていた自分にまさかの病気
編集部
発症から診断までの経緯を教えてください。
森さん
2025年2月初旬、寝起きに両足先のしびれが出て、最初は「寒さのせいか」と思っていました。しかし1カ月たってもしびれが取れず、糖尿病による末梢神経障害も心配だったので、かかりつけ医に相談したんです。すると「紹介状を書くので市民病院の神経内科を受診するように」と指示され、その日のうちにそちらへ向かうことにしました。
最初の診察では、「食事と飲酒の節制でしびれが治ることがある」と言われたため、次回の診察まで節制し、体重も5kgほど落としました。でも、しびれが治ることはなく、神経伝導検査(手足の神経に電気刺激を与え、信号の伝わり方を調べる検査)を実施し、経過観察を経てもう一度同じ検査をすることになりました。
症状が悪化していることは実感していたので、診察の際にその旨を伝えたら、「2度目の検査の数値もよくない」ということで、「髄液検査(背中から針を刺して脳脊髄液を採取し、神経系の異常を調べる検査)を実施する」と説明されました。結果は、髄液中のタンパクの数値に異常があると分かり、「慢性炎症性脱髄性多発神経根炎(CIDP)」との診断でした。
翌日から、入院と免疫グロブリン製剤(自己抗体の働きを抑える点滴薬)の投与を開始したものの、症状の改善は見られませんでした。2度目の治療でも改善が見られなかったため、大学病院の脳神経内科へ紹介状で受診することになりました。
検査と治療のために入院したところ、「自己免疫性ノドパチー(抗NF155陽性/神経の“接着剤”を免疫が壊してしまう病気で、自分に一番効きやすい専用の治療を選ぶ必要があるタイプ)」の診断が出て、血漿(けっしょう)交換の治療(血液をいったん体外に出し、病気の原因となる有害な物質や抗体などを取り除いてから、新鮮な血漿やアルブミン製剤などを投与する治療)を行うことになったんです。
編集部
自己免疫性ノドパチーと告げられた瞬間、どのような心境でしたか?
森さん
聞いたこともない病名な上に、指定難病であるということで、不安でしかありませんでした。ネットで調べてもあまりよいことが書いていなく、絶望感でいっぱいでしたね。
編集部
発症してから、生活にはどのような変化がありましたか?
森さん
もともと体力には自信がありましたが、当たり前にできていたことができなくなりました。精神的にも肉体的にもしんどくなり、やる気がなくなって前を向いて進めなくなっているのが現状です。また、発症前はあまり怒ることがなかったのに、イライラすることが多くなり、怒りっぽくなった気がしています。
日々のリハビリを頑張って元の生活に戻りたい
編集部
現在の体調と、普段の生活の様子について教えてください。
森さん
手足のしびれと感覚鈍麻(感覚を感じにくい状態)は残ったままですが、リハビリを精力的に行い、少しでもQOL(生活の質)を向上させるように努力しています。今は病気休暇中であり、自宅での時間もあるので、家事全般をできる範囲でやっています。特に、今まであまりやってこなかった料理をリハビリも兼ねてやっています。
手足のしびれと感覚鈍麻はいまだに残っている
編集部
治療を続ける中で、心の支えになっているものはありますか?
森さん
すごく気に掛けてくれる友人がいて、いつも励ましてくれていたことが心の支えになりました。家族も不安はあったみたいですが、「なってしまったものは仕方がない」と割り切って、これまでと変わりなく接してくれたことも自分の支えになりました。
あとは、同じような自己免疫疾患で入院している患者さんたちと情報共有ができたことも大きかったですね。多くの人に支えられて自分は生きているのだと感じています。
編集部
日々取り組んでいることはありますか?
森さん
治療とリハビリです。しかし、早期の職場復帰を望んでいるものの、すぐによくなる病気ではないので、無理せず焦らず取り組んでいるのが正直なところです。日々の生活やリハビリがストレスにならないように意識して、気長に進めています。
編集部
もし、症状が出始めたころの自分に何か伝えられるとしたら、どんな言葉を掛けますか?
森さん
難病になるとは思わなかったし、普段病気を意識したこともありませんでした。だから、「何が起きるか分からないんだから、しっかり前を見据えて生きていけよ」と言おうと思います。
編集部
自己免疫性ノドパチーという病気について、知らない人に伝えたいことはありますか?
森さん
自己免疫性ノドパチーは、見た目では分かりづらい、末梢神経が障害される病気で、健康な人とあまり変わらないところがあります。しかし、罹患(りかん)した人は歩きづらかったり、長時間立っていられなかったりと、かなりつらい状況にあるのが現実です。
もし、ヘルプマーク(外見からは分かりにくい援助や配慮を必要とする人が、周囲に知らせるためのマーク)を所持した人がいたら、席を譲るなどしてもらえるとすごく助かります。見た目以上に疲れやすいという特性を持つ病気が存在することを、多くの人が理解してくれるとうれしいですね。
編集部
医療従事者に望むこと、期待することがあれば教えてください。
森さん
患者さんに寄り添った治療方針や職場復帰の提案など、諸々考慮してもらえると、患者さんの病気への不安や生活への不安が少しは和らぐと思います。自己免疫性ノドパチーのように、ほとんどの人が聞いたこともない病気もあります。
一人ひとりの将来まで含め、その人のためになる医療が提供できることを期待します。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
森さん
健康で体力に自信のある人でも、何が起きるか分かりません。当たり前のことができなくなるのがどれだけつらいことか、実際に自分が病気を発症することで理解できました。皆さんには、そんなつらい思いはしてほしくないので、少しでも経験したことのない症状が出た場合は、すぐに病院へ行ってください。早期の治療で最悪の状況は避けられる可能性が上がると思います。

