夜中に足がつる、足がむくむ、だるいなどの症状を「年齢のせい」「疲れのせい」と思って放置していないでしょうか。実はその症状、足の血管の病気である「下肢静脈瘤」が関係しているかもしれません。命に関わる病気ではありませんが、進行すると皮膚炎や潰瘍などを引き起こすこともあるため、早めの受診が大切であるといわれています。そこで今回、下肢静脈瘤の初期症状や見逃してはいけないサイン、検査や治療方法について戸塚共立第2病院名誉院長の饗場先生に詳しく伺いました。
※2026年3月取材。

監修医師:
饗場 正宏(戸塚共立第2病院)
戸塚共立第2病院 名誉院長。専門は心臓血管外科。胸部・腹部大動脈ステントグラフト治療などの血管外科診療に従事し、下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術をはじめとする血管内治療を専門としている。昭和医科大学藤が丘病院 心臓血管外科兼任講師。日本血管外科学会心臓血管外科専門医・心臓血管外科専門医修練指導医、日本脈管学会脈管専門医、日本外科学会専門医・指導医、日本胸部外科学会認定医・指導医、日本超音波医学会認定超音波専門医・指導医。胸部ステントグラフト実施医、腹部ステントグラフト指導医、下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術指導医、大腿動脈ステントグラフト実施医。
下肢静脈瘤とはどのような病気?
編集部
はじめに、下肢静脈瘤とはどのような病気なのか教えてください。
饗場先生
下肢静脈瘤は、足の表面にある静脈の血液の流れが悪くなり、血管がこぶのように膨らんでしまう病気です。下肢の静脈には血液が心臓に向かって流れるよう逆流を防ぐ弁がありますが、この弁が壊れることで血液が逆流し、足に血液がたまって血管が拡張してしまうのです。見た目で血管が浮き出て見えることが多く、進行すると足のむくみやだるさなどの症状が現れます。
編集部
下肢静脈瘤にはどのような種類があるのでしょうか?
饗場先生
下肢静脈瘤は大きく分けて4つの種類があります。 1つ目は「伏在静脈瘤」で、静脈の弁が壊れて血液が逆流する、最も一般的なタイプです。 2つ目の「側枝型静脈瘤」は、伏在静脈から分かれた枝の静脈にこぶが形成されます。3つ目は「網目状静脈瘤」といって、皮膚の下に青い血管が網目状に浮き出て見えるのが特徴です。4つ目は、赤い細い血管がクモの巣のように広がる「クモの巣状静脈瘤」というものです。網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤は血液の逆流が原因ではなく、血管が拡張して見た目に変化が出るタイプで、女性に多いのが特徴です。
編集部
下肢静脈瘤の原因について教えてください。
饗場先生
はっきりとした原因は分かっていませんが、体質や遺伝的な要因が関係しているといわれています。静脈の弁が弱い体質の方は発症しやすいと考えられています。また、長時間立ち続ける仕事や、妊娠・出産によってお腹の圧力が上がること、肥満なども発症のきっかけになるといわれています。
編集部
下肢静脈瘤はどのような人に多い病気なのでしょうか?
饗場先生
長時間の立ち仕事をしている方に多く、女性に多い病気です。特に妊娠・出産をきっかけに発症する方も多いのが特徴です。年齢では60〜80代の方が多いですが、実際にはもっと若い頃から発症していて、症状が出て受診するのがその年代というケースも少なくありません。
見逃されやすい初期症状と体のサイン
編集部
下肢静脈瘤の初期にはどのような症状が現れるのでしょうか?
饗場先生
初期は自覚症状がほとんどないことも多く、血管が浮き出るだけという場合もあります。進行してくると、足のむくみ、だるさ、重さ、足がつる、ピリピリした違和感などの症状が出てきます。特に夕方になると症状が強くなるのが特徴です。ただし、下肢静脈瘤の場合は片足だけに症状が出ることが多いという特徴があります。しびれが強い場合は脊柱管狭窄症など神経の病気の可能性もありますし、両足のむくみは心臓や腎臓、甲状腺の病気が原因のこともあります。
編集部
夜中に足がつる症状、足のだるさやむくみなども下肢静脈瘤の症状として捉えるべきなのでしょうか?
饗場先生
足の血液の流れが滞ることで、夜中に足がつる症状が起こることもあります。しかし、下肢静脈瘤の症状として多いのは、足がつるというよりも、むくみやだるさ、重たく感じるといった症状です。夜中に足がつる症状が続く場合は、下肢静脈瘤の可能性もありますが、それだけで判断するのではなく、足のむくみや血管が浮き出ていないかなども確認することが大切です。
編集部
下肢静脈瘤の症状を放置するとどのようなリスクがあるのか教えてください。
饗場先生
進行すると、足に血液がたまり続けることで「うっ滞性皮膚炎」といって湿疹やかゆみが生じたり、皮膚が黒ずんできたりします。さらに進行すると、血管の中に血の塊ができる血栓性静脈炎を起こしたり、皮膚が壊死して潰瘍ができたりすることもあります。潰瘍まで進行する方は2〜3%程度ですが、そこまで悪化すると治るまでに時間がかかります。また、静脈瘤が破れて出血することもあり、静脈の圧力が高いため勢いよく出血することもあります。

