●「共同親権を申し立てるぞ」が交渉カードになる?
DV被害者の支援を続けてきた岡村弁護士が特に懸念しているのは、共同親権の申立てが元配偶者との交渉材料として使われるケースだ。
家庭裁判所は子どもの利益や安全を考慮したうえで面会交流の回数などを決めるが、別居親の希望どおりにならないことも少なくない。
そうした中、単独親権を持つある同居親のもとに、別居親からこんなメッセージが届いたという。
「共同親権を申し立ててほしくないなら、面会交流の回数を増やせ」
岡村弁護士によると、実際に共同親権の申立てを受けた側には大きな負担が生じる。
「申し立てた本人は弁護士に依頼もしていないことも多く、負担は比較的小さいです。
しかし、申し立てられた側は長文の書面を読み、対応を考えなければなりません。仕事や育児に追われる中で、自分での対応が難しいと感じれば弁護士への依頼も検討することになります」
法テラスを利用した場合でも、一定の費用負担は生じる。
「認められる可能性が高くない申立てであっても、申し立てられた側には精神的・経済的負担も生じます。そのため、中には、相手方への圧力や交渉材料として利用されているのではないか思わざるを得ないケースもあります」
夫からDVやモラハラを受けている女性の中には、「どうせ離婚しても、共同親権にさせられて、夫の鎖から逃れられないんですよね」と不安を口にする人もいるという。
●共同親権への移行がスムーズなケースも
一方で、共同親権へとスムーズに移行し、制度が機能しているケースもある。
「子どもが中学生や高校生など比較的年齢が高く、父母双方が子どもの意見を尊重できるケースです」
離婚後も、父母の間に一定の信頼関係が残っており、共同親権について双方が合意している場合には、大きな問題は生じにくいという。
「共同親権そのものに経済的メリットがあるわけではありませんが、『親権者である』という意識から、別居親が学費負担などに協力的になることを期待して選択するケースもあります。そうした事案は、4月以降に申し立てをして、すでに手続きが終わっています」
もっとも、それは制度によって関係が改善したわけではないと岡村弁護士は指摘する。
「もともと協力できる父母だからうまくいくのであって、共同親権の制度そのもが関係を改善したわけではありません」

