「高血圧」を放置するとどうなるかご存じですか? 脳・心臓・腎臓・目への影響を医師が解説

「高血圧」を放置するとどうなるかご存じですか? 脳・心臓・腎臓・目への影響を医師が解説

高血圧は日本人に非常に多い病気です。しかし、「少し高いだけだから大丈夫」「症状がないから問題ない」と考えている人も少なくありません。高血圧は自覚症状がほとんどないまま血管に負担をかけ続け、脳卒中や心筋梗塞、慢性腎臓病などの重大な病気につながる可能性があります。健診で指摘されても受診せず、そのまま放置している人も多いのが現状です。そこで本記事では、高血圧が体に及ぼす影響や放置するリスク、治療や予防のポイントについて百合ヶ丘つだ内科心臓不整脈クリニック院長の津田泰任先生に解説してもらいました。

※2026年5月取材。

津田 泰任

監修医師:
津田 泰任(百合ヶ丘つだ内科心臓不整脈クリニック)

百合ヶ丘つだ内科心臓不整脈クリニック 院長。2005年山口大学医学部医学科卒業後、福岡和白病院にて初期臨床研修を行う。川崎幸病院では循環器内科医長、総合診療部救急部医長、不整脈電気生理グループ長を歴任し、「断らない救急」を掲げ救急医療と循環器診療に従事。横浜新都市脳神経外科病院、AOI国際病院循環器内科 不整脈先端治療センター医長などを経て現職。生活習慣病診療からカテーテル治療、不整脈治療まで幅広く対応している。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本不整脈心電学会不整脈専門医。

高血圧はサイレントキラー――放置するとどんな悪影響が出るのか

高血圧はサイレントキラー――放置するとどんな悪影響が出るのか

編集部

高血圧とは医学的にどのような状態を指すのでしょうか? 正常血圧との違いや、数値の目安も教えてください。

津田先生

高血圧とは、血管の壁に慢性的に過剰な圧力がかかり続けている状態を指します。診察室での収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。最もリスクが低い「正常血圧」は120/80mmHg未満と定義されており、この数値を超えると段階的に血管への負担が増していきます。血圧が基準を超えて高くなるほど、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病といった命に関わる心血管病の発症リスクが直線的に上昇するとされています。

編集部

高血圧は進行すると、体にどのような悪影響が表れるのでしょうか?

津田先生

自覚症状がないまま全身の血管をむしばみ、最終的に脳卒中や心筋梗塞といった、命に関わる合併症を突発的に引き起こします。これが、高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれる理由です。
日本高血圧学会のガイドラインでも、高血圧を放置すると、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが高まることが示されています。また、常に血管へ強い圧力がかかることで動脈硬化が進行するほか、腎臓にも深刻なダメージを与え、人工透析にいたる主要な原因にもなります。
症状がないからと放置せず、数値の段階で適切にコントロールすれば、心臓・脳・腎臓などに生じる致命的なダメージ(標的臓器障害)を防ぐことができます。

編集部

高血圧を放置すると、具体的にはどのような病気につながるのでしょうか?

津田先生

高血圧によって全身の動脈硬化が進行すると、脳・心臓・腎臓など生命維持に関わる重要な臓器に深刻なダメージを与えることになり、代表的な疾患としては脳卒中や心筋梗塞につながります。加えて大動脈の壁が裂ける「大動脈解離」、大動脈にできたこぶが破裂する「大動脈瘤破裂」、足の血管が詰まる「閉塞性動脈硬化症」など、全身の重篤な血管病を誘発します。
さらに近年の研究では、微小な脳梗塞の多発や脳血流の低下により、認知症の発症リスクが高まるとも報告されています。これらの病気は命に関わるだけでなく、重い後遺症によって生活の質(QOL)を著しく低下させるリスクがあります。だからこそ、日頃からの早期かつ適切な血圧管理が不可欠なのです。

編集部

高血圧と脳や心臓以外の臓器との関係について教えてください。

津田先生

高血圧の影響は脳や心臓にとどまらず、全身の血管網を通じて「腎臓」や「目(網膜)」など、多くの臓器に深刻な障害を及ぼします。とくに腎臓は微細な血管の集合体であるため、血圧の影響を強く受けます。高血圧による動脈硬化が進むと、腎臓のフィルター機能が破壊され、結果として慢性腎臓病から人工透析へといたるリスクが著しく高まります。
また、目の奥にある網膜の血管がダメージを受けると、「高血圧性網膜症」を引き起こす恐れがあります。進行すれば眼底出血や視力低下、最悪の場合は失明にいたる危険性も伴います。実際に、高血圧の人は正常な人に比べて、先述した腎不全や網膜症の発症率が高いことがデータでもわかっています。症状のないまま全身の臓器がむしばまれていくため、目や腎臓を守るという観点からも厳格な血圧管理が必要です。

「自分は大丈夫」は禁物 受診のタイミングと放置リスク

「自分は大丈夫」は禁物 受診のタイミングと放置リスク

編集部

高血圧はなぜ症状に気づきにくいのでしょうか?

津田先生

血管に圧力がかかっても、臓器が限界を迎えるまでは、代償機構(体が負担に適応しようとする仕組み)によって機能を維持できるからです。血管には神経が通っていないため、動脈硬化がどれほど進行しても内側からの痛みや違和感を覚えることはありません。
日本高血圧学会のガイドラインや疫学調査のエビデンスでも、頭痛やめまいといった症状が表れる時期は、血圧が極端に上昇した急性的な局面か、すでに合併症が発症した段階であると報告されています。日常の軽微な体調不良と区別がつかないため放置されやすい傾向にあります。健診での指摘を軽視せず、家庭血圧を測定して客観的な数値で把握してください。

編集部

「この数値が出たら病院に来てほしい」という判断基準はありますか?

津田先生

日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」において、受診すべき高血圧の診断基準は、診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上と定められています。改訂によって、目指すべき降圧目標(血圧を下げる目標値)がさらに厳格化されました。全年齢で130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)に統一された点がポイントです。
リラックスした環境での家庭血圧のほうが将来の脳卒中リスクをより正確に予測できるというエビデンスがありますので、家庭血圧で135/85mmHg以上が続く場合は、高血圧が疑われるため受診を検討してください。一方、治療中の降圧目標は、原則として家庭血圧125/75mmHg未満が目安とされています。

編集部

定期健診での「要経過観察」を数年放置し続けると、どれほどのリスクがあるのでしょうか?

津田先生

定期健診の「要経過観察」は決して安全宣言ではなく、高血圧を数年単位で放置すると、血管の老化(動脈硬化)が不可逆的に進行します。「症状がないから来年でいいや」という数年の先延ばしが、命やQOLを奪う合併症へ直結するため、速やかな受診が必要です。

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。