椎間板ヘルニアを防ぐためにできること
編集部
どのような症状があった場合、医療機関を受診したほうがよいのか教えてください。
逸見先生
腰痛は数日から2〜3週間ほどで落ち着くことも多いですが、1週間以上痛みが続く場合や、腰痛だけでなく足にかけての痛みやしびれがある場合は受診をおすすめします。椎間板ヘルニアは、飛び出してくる途中のときが最も痛みが強いといわれています。完全に飛び出してしまうと椎間板の内圧が下がり、痛みが軽くなることもあります。また、飛び出した椎間板を体が異物として認識し、吸収していくことで症状が改善していく場合もあります。ただし、症状が強くなっている場合や日常生活に支障がある場合は、ほかの病気の可能性も含めて検査を受けた方がよいでしょう。
編集部
椎間板ヘルニアはどのような検査・治療がおこなわれますか?
逸見先生
診断にはMRI検査をおこないます。治療の流れとして、まず安静にすることが大切です。少しでも椎間板に負担をかけない行動により 自己修復が働きます。前かがみの姿勢や無理な動作を避けることが重要です。薬や湿布はヘルニアそのものを治す薬ではありませんが、痛みの軽減には効果的です。コルセットは前かがみを制限し、椎間板にかかる負担を軽減しますので効果的です。それでも痛みが改善しない場合は、神経の痛みを和らげるブロック注射をおこないます。ブロック注射で効果が得られない場合、当院では飛び出しかけているヘルニアに対して、椎間板に生理食塩水や局所麻酔薬を注入し、ヘルニアの吸収を促す『椎間板加圧注水療法』を行っております。多くの場合は時間の経過とともに改善し、手術が必要になるケースはそれほど多くありません。強い痛みや麻痺が続く場合などに、最終的な治療として手術を検討します。症状が続く・悪化する場合は必ず受診をするようにしてください。
編集部
椎間板ヘルニアを予防するために日常生活で意識すべきことはありますか?
逸見先生
前かがみの姿勢を長時間続けないことが大切です。床に座る生活や低い椅子、あぐらの姿勢などは腰に負担がかかります。物を持ち上げるときは腰だけを曲げるのではなく、膝を曲げて持ち上げるようにしてください。また、腰が悪いと腹筋を鍛えようとする方が多いのですが、腹筋は日常生活でも使う筋肉です。一方で、背中の筋肉は意識しないと弱くなりやすいため、背中の筋肉や体幹の筋肉を弱らせないことがとても重要です。姿勢を良くして大股で速く歩くことで、腹筋や背筋などの体幹の筋肉を使うことができます。日常の散歩でも、ゆっくり歩いたり大股で速く歩いたり、交互におこなってみるなど、日常生活の中で少し意識するだけでも体幹の筋肉を鍛えることにつながります。体幹の筋肉で背骨を支えることで、椎間板への負担を減らすことができます。
編集部まとめ
椎間板ヘルニアは、特別な人だけがなる病気ではなく、年齢とともに椎間板が変化していく中で誰にでも起こり得る病気です。前かがみの姿勢や長時間座り続ける生活、床に座る姿勢など、日常生活の姿勢や習慣が大きく関係していることがわかりました。一方で、多くの椎間板ヘルニアは安静や保存療法によって改善することも多く、まずは痛みをコントロールしながら回復を待つ治療が中心であると教えていただきました。本稿をきっかけに、腰痛やしびれを「そのうち治るだろう」と放置せず、ご自身の体や生活習慣を見直すきっかけにしていただければ幸いです。

