肝臓のGLP-1受容体に直接作用の可能性
続いて登壇したノボ ノルディスク ファーマ 取締役 開発本部 本部長のマルチン・ジヒマ氏は、セマグルチドがこれまで肥満症や2型糖尿病の治療にどのように使われてきたか、そしてMASHにどのように作用するのかを解説しました。
セマグルチドはGLP-1受容体作動薬として、まず2型糖尿病における血糖コントロールの改善で承認(商品名:オゼンピック/リベルサス)されました。その後、肥満症を対象とした臨床試験で有効性・安全性が確認されたため、肥満症治療薬(商品名:ウゴービ)としても使われるようになりました。ジヒマ氏は「さらに大規模な研究事業の結果、心血管疾患、腎疾患、心不全、末梢動脈疾患などさまざまな領域でセマグルチドに関する知見が報告されており、その可能性について研究が進められています」と述べました。
MASHに関してジヒマ氏は、「臨床研究でセマグルチドにより肝臓の線維化の改善とMASHの消失が確認されました。この結果は、体重減少や血糖コントロールを介して間接的に肝臓へ良い影響を与えるだけでなく、肝臓に存在するGLP-1受容体を介した働きを持つ可能性があります」と紹介しました。この受容体は肝臓の血管内皮細胞に存在し、炎症を抑える働きに関わっているとみられています。非臨床の研究では、GLP-1受容体の働きを抑えると、体重減少や血糖コントロールが保たれていても、セマグルチドによる肝臓への改善効果が弱まったことが示されており、体重減少とは別の経路でも肝臓に作用している可能性が示唆されています。
「沈黙の肝臓」に光を当てる新時代へ
今回の会見を通じて繰り返し語られたのは、「自覚症状がないまま進行する病気に、いかに早く光を当てるか」という視点です。
中島先生は、「薬が承認されたので、積極的にMASH/MASLDの患者さんを早期に拾い上げて治療し、健康寿命を延ばすことが可能になりました」と述べました。これまでは、かかりつけのクリニックや糖尿病内科などで脂肪肝に気づいても、治療薬がないため肝臓の病気を専門とする医師に紹介されなかったケースもあったかもしれません。しかし今後は、見つけた医師が治療すべき人を選別し、肝臓の専門家に紹介することで「社会実装」がかなうと、中島先生は期待を寄せます。ジヒマ氏も、MASH/MASLDの認知度を高血圧や脂質異常症と同じレベルまで引き上げ、より多くの患者さんが適切にスクリーニングされ、診断されることを目指すと語りました。
健康診断などで脂肪肝や肝機能の値の異常を指摘された経験がある人は、自覚症状がなくても、まずはかかりつけ医に相談してみることが、次の一歩につながるかもしれません。
*本稿は、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社主催のプレスセミナーの内容を基に構成した情報提供を目的とした記事であり、特定の治療の受診や使用を推奨するものではありません。
*本稿で紹介した作用機序に関する知見の一部は非臨床(動物・培養細胞等)研究に基づくものであり、ヒトでの臨床的意義については今後の検討が必要です。
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