深夜の介護施設で夜勤をしていたとき、今でも忘れられない出来事がありました。静まり返ったフロアに突然響いた物音。そして、ある居室から聞こえてきた切迫した声。普段の身体状況からは考えにくい利用者様の姿を目の当たりにし、私は「動けないはず」と思い込むことの危うさを強く感じました。
深夜のフロアに響いた物音
その夜、私はいつものように夜勤の巡回にあたっていました。フロアは静まり返っており、利用者の様子を確認しながら、ゆっくりと廊下を歩いていました。すると突然、どこからか「ガタン」という、やや大きな鈍い音が聞こえてきたのです。
最初は、どの部屋から聞こえた音なのかはっきりわかりませんでした。私はその場で足を止め、耳を澄ませながら周囲の様子を確認しました。
すると、ある居室のほうから「〇〇! 〇〇!」と、必死に誰かを呼ぶ声が聞こえてきました。それは、その利用者の娘さんの名前でした。
ベッド下に座り込んでいた利用者
ただ事ではないと感じた私は、声のする部屋へ急いで向かいました。居室に入ると、目に飛び込んできたのは、ベッドの下へ滑り落ち、床に座り込んでいる利用者の姿でした。
その方は普段、車椅子を使用されていました。自力で立ち上がることはもちろん、起き上がる際にも一部介助が必要な状態でした。そのため、ひとりでベッドの端まで移動することさえ難しいと考えられていたのです。
しかし、目の前の利用者は、娘さんの名前を呼びながら、何とか動こうとされた様子でした。その姿を見た瞬間、私は驚きで言葉を失いました。

