脳梗塞を発症しやすいのは「熱い湯船に少し浸かる」「長風呂」どっち?メディカルドック監修医がお風呂の健康効果や入浴中・入浴後の注意点も解説します。

監修医師:
村上 友太(医師)
医師、医学博士。
福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長、東京予防クリニック院長を歴任。現在は神宮前統合医療クリニックなどで脳機能向上、認知症予防を中心に診療している。
【資格・所属】
日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本抗加齢医学会専門医
日本健康経営専門医
「脳梗塞」とは?

脳梗塞とは、脳の血管が何らかの原因で詰まってしまい、その先の脳細胞に血液(酸素や栄養)が行き届かなくなることで、脳の組織が壊死(えし:細胞が死んでしまうこと)する病気です。
脳梗塞は大きく分けると、以下の3つのタイプに分類されます。
・ラクナ梗塞:脳の深い部分にあるごく細い血管が詰まるタイプ。主な原因は高血圧。
・アテローム血栓性脳梗塞:首や脳の太い動脈に動脈硬化(血管が硬くドロドロになること)が起き、そこに血栓(血の塊)ができて詰まるタイプ。生活習慣病が深く関係。
・心原性脳塞栓症:心臓の中にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、太い血管を突然詰まらせるタイプ。主な原因は心房細動という不整脈。
脳梗塞を発症すると、突然の「片方の手足の麻痺やしびれ」「言葉がうまく話せない(ろれつが回らない)」「他人の言葉が理解できない」「視野の半分が見えなくなる」「激しいめまい」などの症状が現れます。
脳細胞は一度壊れてしまうと再生が難しいため、一刻も早い治療が必要です。そして何よりも、発症させないための予防医療がとても重要になります。
お風呂の健康効果

日本特有の習慣である「湯船に浸かる浴槽入浴」は、からだの洗浄や一時的なリラクゼーションだけではなく、循環器系や神経系に対して優れた予防医学的効果をもたらすことが知られています。
温熱作用による血行促進効果
湯船に浸かって体が温まると、皮膚の血管が広がり、全身の血流が非常に良くなります。血行が促進されることで、体内に溜まった疲労物質(乳酸など)や老廃物が血液によって押し流され、肩こりや腰痛、疲労の回復が促されます。また、毛細血管まで血液が行き渡るため、新陳代謝も活発になります。
静水圧作用によるむくみ解消効果
お風呂に入ると、体にはお湯の重さによる圧力(静水圧:せいすいあつ)がかかります。特に、下半身には強い圧力がかかるため、お腹や足の血管が適度に圧迫されます。これによって、重力の影響で下半身に滞りがちだった血液やリンパ液が、まるでポンプのように心臓へと押し戻されます。この作用によって、足のむくみがすっきりと解消され、全身の循環がスムーズになります。
浮力作用による筋肉と関節の弛緩効果
プールに入ると体が軽く感じるのと同じように、湯船の中でも「浮力(ふりょく)」が働きます。首までお湯に浸かった場合、体重は約10分の1にまで軽くなります。これによって、普段は体重を支えている背骨や腰、膝の関節への負担が軽くなります。重力から解放された筋肉や関節の緊張がほぐれて、心身ともに深いリラックス状態を得ることができます。
血管内皮機能の改善効果
定期的な入浴習慣は、血管の最も内側にある細胞(血管内皮細胞)の働きを良好に保つことが分かっています。温熱刺激によって血管内皮から「一酸化窒素(NO)」という物質が分泌されやすくなり、血管がしなやかに広がりやすくなります。そうすることで、動脈硬化の進行を抑え、結果的に脳梗塞のリスクを下げるという長期的な予防効果がもたらされます。
自律神経の調整によるリラックス効果
ぬるめのお湯(38℃〜40℃程度)にゆったりと浸かると、自律神経のうち副交感神経が優位になります。副交感神経は、体を休息・リラックスモードにする神経です。つまり、ストレスが緩和され、心拍数や血圧が穏やかに下がっていきます。緊張が解けることで、睡眠の質を高める効果も期待できます。

