闘病が教えてくれた生きる意味
編集部
現在の体調や生活の様子について教えてください。
橋本さん
社会復帰はしました。ただ、闘病中の数年間は治療に必死で周りが見えず、その間に時間だけが進んでいきました。自分一人だけ取り残されたような感覚に襲われるときもあります。また、体調が優れないときは、「もしかしたら再発しているのではないか」と不安になることもあります。さらに、同年代の女性が結婚・出産・育児・昇進と人生の節目を順調に重ねていくのを見て、「自分は何をやっているのだろう」と思う日もあります。
患者会やリレー・フォー・ライフ(がん患者さんや家族を支援するチャリティーイベント)でオリジナルソングを披露したり、SNSに投稿をしたりする中で、新しい生活も始めつつあります。それでもやはり望むのは、人並みの生活です。
後遺症で残ってしまった末梢神経障害は、冬場にまだ出ることがあります。腕と胸にポート(抗がん剤などを点滴するために体内に埋め込む医療器具)を入れたときの傷痕もあります。何年たっても、病気になる前の自分には戻れません。
リレー・フォー・ライフの控室にて
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
橋本さん
医療従事者にお願いしたいのは、「今ここにいる患者さんに向き合ってほしい」ということですね。体がつらい、心がつらい、髪が抜けてつらい、抗がん剤の副作用がつらい——患者さんは、たくさんのつらい思いをしながら、必死に治療を受けています。その事実に目を向けてもらえるとありがたいですね。
ある看護師は、私が笑顔の日も、涙の日も、怒りの日も、そっと隣で一緒に歩んでくれました。退院して、社会からの偏見に傷ついたときも、静かに寄り添って見守ってくれました。
別の看護師は、悩み事に一緒に向き合ってくれました。体力面や働き方など、これから生きていく上で大切なことも教えてくれました。そんな看護師がいる場所が、もっと増えるといいなと思っています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
橋本さん
「白血病は不治の病」というイメージを持つ人も多いと思います。どんなイメージを持つかはそれぞれの自由ですが、白血病と闘っている人や経験した人に向かって、「不治の病だよね」といった軽率な言葉を掛けるのは、どうか控えてください。
患者さんは必死で治療と向き合い、生きることへの希望を持ち続けています。死への恐怖と闘っています。そんな気持ちを、少しでも分かってもらえたらと思います。
私のオリジナルソングは、そんな素直な気持ちを歌詞にしたものです。患者さんや医療従事者からも応援の声をもらいました。私の歌を聴き、病気と闘っている人のそばにそっと寄り添い、支えていく人が少しでも増えたらうれしいですね。
編集後記
橋本さんは、急性リンパ性白血病の告知から長期治療、副作用、体力の喪失、死への恐怖と向き合いながらも、音楽を通して生きる希望を紡ぎ続けています。橋本さんが願うように、病気と闘う人のそばでそっと寄り添うことこそ、私たちにできる支えなのかもしれません。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
記事監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
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