私の両親はどちらも料理が得意ではなく、実家の食卓には、生焼けの料理や味付けに失敗した料理が並ぶことも珍しくありませんでした。そんな環境で育った私が、まさか料理を好きになるなんて……思ってもいませんでした。
姉がくれた1冊の料理本
大学進学を機にひとり暮らしを始めた私は、「これからは自分で料理をしなきゃ」と不安でいっぱいでした。そんな私に、ひと足先に実家を出ていた姉は、辞書のように分厚い料理本を差し出してこう言いました。
「まずは、この本の料理をひと通り作ってみて。きっと料理ができるようになるから」
そう言われた私は、「これ全部つくるの?」と驚きました。
最初は包丁もうまく使えず、食材を無駄にすることもありました。それでも毎日続けるうちに、余った食材で別の料理を作れるようになり、下ごしらえや保存方法も自然と身についていきました。
結局、料理本をすべて作り終えるまでかかったのは約2年。しかしそのころには、「家で作る料理って、こんなにおいしいんだ」と感じるようになり、料理が少しずつ好きになっていったのです。
「こんなの、お店でも食べたことがない!」
その後、夫と出会い、同棲生活が始まりました。初めて夫に作った料理は、豚のしょうが焼きです。
レシピを思い出しながら作り、食卓へ並べました。すると、ひと口食べた夫が驚いたような表情で、こう言いました。
「どうやったらこんなにお肉がやわらかくなるの!? こんなの、お店でも食べたことがない!」
まさかそこまで喜んでもらえるとは思っておらず、私までびっくりしてしまいました。
それまではレシピ通りに作ることだけを意識していましたが、そこからは夫の好みに合わせて味付けを変えたり、栄養バランスを考えたりと、自分なりに工夫するようになったのです。

