子宮頸がん闘病を経た慎吾ママの生みの親が語る、HPVワクチン薬害報道が日本に残した「重い代償」

子宮頸がん闘病を経た慎吾ママの生みの親が語る、HPVワクチン薬害報道が日本に残した「重い代償」

積極的勧奨の再開後も接種率は伸び悩み

角田郁生:
ワクチン接種と定期的な検診を組み合わせることで、子宮頸がんの多くは予防可能とされています。そのためHPV関連のがん対策は、性別を問わず重要な課題です。
しかし、日本のHPVワクチン接種率は長期間にわたり低い水準が続いてきました。2015年時点の報告では、対象世代の接種率は0.6%でした。一方、ルワンダでは同接種率が99%に達していました。
日本で圧倒的に接種率が低い要因は、2013年にHPVワクチン接種の積極的勧奨が中断され、約9年間にわたり事実上の接種空白期間が生じたためです。この背景には、HPVワクチンの副反応に苦しんだ女性たちによる訴訟や、同訴訟に関する不適切な報道の影響がありました。2022年4月に積極的勧奨が再開された後も、所定回数の接種を完了した対象者の割合は約30%にとどまっています。

年間約3000人が子宮頸がんで亡くなっている現状がある一方で、HPVワクチンによる重篤な健康被害の発生頻度はほかのワクチンに比較して高くありません。私たちには接種リスクをどのように捉え、どう判断するかが問われています。

訴訟証拠は科学的に誤り――情報の届け方に課題も

角田郁生:
2024年11月から、私を含む複数の専門家が国側証人として証言を行っています。原告側資料に引用された論文を精査したところ、有名な学術誌の掲載論文も含まれていましたが、科学的に誤った点が多く見受けられました。テレビで大きく報じられたマウス実験もありましたが、実際にはマウス1匹で実施されたもので、複数匹での再現実験では同様の結果は得られず結果は否定されました。しかし、一度報道された情報は現在もインターネット上で拡散されています。

堀江貴文:
僕が見てきた中では、いわゆる「反ワクチン」に陥る人には一定のパターンがあると感じます。体調を崩しやすい人がまず西洋医学の標準治療を受けて、それでも不調が改善しない時にさまざまな情報を得る中で、ワクチンそのものや副反応に対する不安が強まっていくパターンが多いようです。ネガティブな情報に対して敏感になり、最終的に反ワクチンの立場に傾いていくケースが少なくありません。

角田郁生:
報告によれば今回の訴訟では、接種前から家庭環境や人間関係などで大きなストレスを抱えていたケースが多数あったようです。精神的ストレスが身体症状として表れることは医学的にも知られています。しかし、当時対応にあたった医師には児童精神科や心療内科の知見が不足しており、思春期に多くみられる症状をワクチンの副反応と誤判断してしまったと考えられます。ワクチンの副反応に関しては、多角的な視点からの評価が重要です。

たむら ようこ:
私は報じる側にも課題があると感じています。専門家でない立場からは「報道内容は妥当か否か」の判断が難しく、その結果、不正確な情報が広がることもあります。また、報道現場ではHPVの問題に十分な関心が向けられていないと感じる場面もあり、特に男性記者はほとんど関心を持っていない人もいる印象です。

堀江貴文:
僕が提示したい解決策の一つは、男性にも発症リスクがある中咽頭がんの話題を含めることで、自分ごととしてHPVの問題を考えてもらう方法です。また、予防医療普及協会では、子宮頸がんワクチンではなく「HPVワクチン」と名称統一を推進し、男性も接種できる医療機関およびクリニックに関する情報整備も進めています。伝え方を変えるだけで、届く範囲は大きく変わるはずです。

たむら ようこ:
ニュースから情報を得ない人に対して、どのように情報を届けるかも考えなければなりません。かつて、MRI普及を目的として小説を作成、後にドラマ化し、認知が広がった事例もありました。HPVワクチンについても今後、ドラマやエンターテインメントの力で届ける方法を模索していきたいと考えています。

角田郁生:
多くの人に正しい情報を届ける方法を見出すことはとても大事ですね。熱心に情報収集を行っている反ワクチンの人は珍しくありませんが、インターネット上には不正確な情報も多く存在します。だからこそ、科学的根拠に基づく情報を継続的に発信していくことが重要です。

配信元: Medical DOC

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