●刑務所は今でも「二度と戻りたくないと思わせる場所」
刑務所について、「二度と戻りたくないと思わせるような場所にすべきだ」といった意見を耳にすることがある。
これについて、男性は「現状でも、すでにそうなっています」としたうえで、次のように説明する。
「刑務所に入ると、全員に『遵守事項』という冊子が配られるのですが、そこに書かれている禁止事項の第一項が『逃走』でした。この国の刑務所は、余程のことがない限り、逃走は不可能です。
そして、第二項に書かれていたのは『自殺(企図)』です。つまり、受刑者の絶対的な義務は、『服役すること』なんです。常に刑務官の監視の下にあって、首吊りをしようとしても、舎房内はひも状のものを引っかけることができないようになっています。
自殺の是非は別として、一般社会に生きている人には最後の選択肢として残されている行為が奪われるというのは、精神的に相当にキツいです」
●「ムショの1日は娑婆の1週間」 塀の中で遅くなる時間の流れ
男性にとって、塀の中の生活はどのような経験だったのか。
「刑務所は、自分とは無縁の世界だと思っていました。例えるなら、私にとっての『ワールドカップ』みたいなものでした。私はサッカーにまったく興味がないので、試合を見て喜んでいる人たちの感覚がよくわかりません。
実際にムショに入ってからは、何もかもが初めてのことだったので、『こういうところなのか』と受け止める以外にありませんでした。私には、2年余りの刑期ですら無限に思えました。無期ともなれば、想像もつきません」
北海道の旭川市や江別市で起きた事件では、20代前半の女性たちに20年を超える長期刑が相次いで言い渡されている。
男性は最後にこう語った。
「ムショの1日は、娑婆の1週間。ムショの1週間は娑婆の1カ月。ムショの1カ月は、娑婆の1年。そのくらい、塀の中では時間の流れが遅いんです。20数年後に出所したとき、誰が彼女たちを受け入れてくれるのでしょうか?」

