書籍『うちの子、発育が早いかな?と思ったら読む本』(監修:今西洋介〈ふらいと先生〉/日東書院本社)は、小児科医で、思春期早発症の子どもを育てる親でもある著者が、自身のリアルな経験を交えながら、病気の基礎知識や治療、家庭での向き合い方までをわかりやすく解説し、子どもと保護者の不安に寄り添う一冊です。
今回は、『メンタルや将来への影響』について、一部抜粋してお届けします。
気になるメンタルや将来への影響

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医師から思春期の仕組みについての説明を聞きながらも、親御さんの心中は「これからどうなるのだろう」という心配で占められていると思います。思春期にどんなことが起きるか。これ自体は、親御さん自身も経験されていることなので、おおよそ理解できているでしょう。しかし、それが人より早く起きるとなると、途端に想像がつきにくくなります。いま現在の苦痛はないにしても、何か困ったことが起きるのではないか、将来に影響があるのではないかと不安になるのは当然です。
親御さんが心配されることのひとつに、思春期早発症になったことにより将来の妊娠、出産に影響が出るのかということがあります。特に女の子の親御さんで、不安に思われる方が多いようです。妊娠、出産をできる・できないが人生の選択肢に大きくかかわるという考えからでしょう。
中枢性・特発性の思春期早発症についていえば、思春期早発症になったこと、そしてそれを治療したことによる妊娠、出産への影響は、男女とも基本的にないことがわかっています。

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また、お子さんのメンタルに影響があるのではないかと気にされる親御さんも多いです。思春期がはじまり、ほかの子より成長が進んでいるといっても、それは身体のことであって、知的、そして精神的な発達は年相応です。そのギャップに戸惑うのではないか、自分だけほかの子と違うことを不安に感じるのではないか、という心配です。
身体の変化と心の動きは、必ずしも一直線につながるわけではありません。たしかに「初経年齢が低いほど、思春期の問題行動や性的接触の早期化、成人期の精神疾患、高BMIと関連がある」といった研究報告はありますが、これらはあくまで統計の結果であり、思春期早発症との因果関係は証明されていません。しかし、何かでこうした情報を見聞きした親御さんが気に病むのは、無理からぬところがあるでしょう。
「ませてしまうのでは」という懸念

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たとえば成人期の精神疾患については、こう考えることができます。初経年齢は全世界的に、年々低下しています。10年単位で見れば、思春期がはじまる年齢が男女の別なく少しずつ早まっていることも、研究によってわかっています。一方で、精神疾患については社会の理解が徐々に進み、成人が精神科などにかかることは、かつてほど特別なことではなくなりました。単純に精神疾患の成人が増えているというより、以前と比べてそれを自覚し、医療につながり、統計に残る人が増えていると考えたほうが適切かもしれません。
ここに、「全体的に思春期が早まっていること」と「成人の精神疾患が増えたように見えること」というふたつの現象が並んで存在しています。しかし、このあいだに直接の因果関係があるかどうかについては、現時点では明確な結論は出ていません。ですから、思春期早発症が精神疾患を誘発するのではないかと過度に恐れる必要はないでしょう。
思春期の問題行動や性的接触の早期化については、子どもが「ませてしまうのでは」「性的なトラブルを起こさないか」と心配する親御さんが少なくありません。思春期は、脳が活性化し、性ホルモンの分泌がはじまることで進行します。身体の変化に加え、性的な関心やそれに関連する行動が見られるようになるのは、自然なことです。特に男の子で、それらしい行動が目立つお子さんもいます。

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思春期早発症そのものが、性的好奇心の強さや「ませた言動」を直接引き起こすとまでは断言できません。ですが、年齢に対して思春期の変化が早く現れることで、子ども自身の理解や社会的な経験が追いつかないまま、思春期特有の行動が表に出てくる可能性はあります。たとえば、もともと人との距離感の取り方に個性がある場合、そこに思春期の影響が重なって、周囲が戸惑うような対人行動として現れるというケースです。
この点については、「思春期早発症で問題行動が増える」とする研究もあれば、関連を否定する研究もあり、現時点で結論は一致していません。対象となる子どもの背景や定義によって結果が左右されやすく、科学的に評価がむずかしい領域でもあります。そのため、「思春期早発症は、思春期特有の問題を直接引き起こす病気とまでは言えないものの、そうした問題が生じやすい状況をつくる可能性がある」と理解しておくとよいでしょう。
