進行大腸がんでも「約20%」は便潜血で陰性? 検査の限界を医師が解説

進行大腸がんでも「約20%」は便潜血で陰性? 検査の限界を医師が解説

健康診断や人間ドックで行われる「便潜血検査」。毎年陰性だから安心している人も多いかもしれません。一方で、大腸がんは初期には自覚症状が乏しい上、便潜血検査だけでは見つからないケースもあります。今回は、便潜血検査の役割や限界、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受ける意義について、大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック院長の笹島先生に話を聞きました。

※2026年6月取材。

笹島 圭太

監修医師:
笹島 圭太(大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック)

千葉大学医学部卒業後、消化器内科医として臨床経験を重ね、昭和大学横浜市北部病院(現・昭和医科大学横浜市北部病院)で超拡大内視鏡の開発や論文発表を行う。さいたま赤十字病院では内視鏡センター長を務め、大腸・食道・胃のESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を通算2800例以上施行し、早期がんに対する内視鏡診断と治療を専門とする。胃・大腸内視鏡検査は5万件超の経験を有する。日本消化器内視鏡学会指導医・社団評議員・和文誌査読委員、日本消化器病学会指導医・学会評議員、日本消化管学会指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本内科学会認定医、医学博士。昭和医科大学横浜市北部病院兼任講師。

便潜血検査ってどんな検査?

便潜血検査ってどんな検査?

編集部

便潜血検査とは、どのような検査なのでしょうか?

笹島先生

便潜血検査とは、便の中に肉眼では見えないレベルの血液が混じっていないかを調べる検査です。大腸がんや大腸ポリープ、炎症などがあると出血することがあり、その血液を検出します。簡便で体への負担もほとんどないため、健康診断や人間ドック、大腸がん検診などで広く行われています。主に「2日法」といって、2日分提出する方法が採られています(※)。

※2027年度より「1日法」が採用される見込みです。
1日法へ変更される理由
・1日法と2日法で、がんの発見頻度に統計学的な差がなかったため
・1日分の提出で済むことで、提出率の向上が期待されるため
懸念点
・従来の2日法では、2回目の検体で陽性となりがんが見つかった人も多くいた
・そのため今回の改定により、がんを検出できる確率(感度)の低下が懸念される

編集部

便潜血検査で「陽性」と言われた場合は、どう考えればよいのでしょうか?

笹島先生

2日分提出したうち、1日でも陽性であれば精密検査の対象になります。ただし、陽性だから必ず大腸がんというわけではありません。痔(じ)や経血の混入などでも陽性になることがあります。一方で、実際に大腸ポリープや大腸がんが見つかる例も少なくないため、「様子を見る」のではなく、速やかに大腸カメラを受けることが重要です。

編集部

痔がある人の場合、「陽性」をどう受け止めればよいのでしょうか?

笹島先生

便潜血検査で陽性と判定された場合は、「病気があると決まった」という意味ではなく、「検査をする重要なきっかけを得た」と考えてもらいたいですね。陽性となっても「痔から出血しただけだろう」「硬い便が出たせいだろう」と自己判断してしまうことがありますが、便潜血検査で陽性になった原因が痔や肛門からの出血だとは限りません。大腸がんの前駆病変である大腸ポリープや大腸がん、潰瘍性大腸炎など、治療が必要な病気が隠れている可能性もあります。

編集部

便潜血検査で病気の有無を診断できるわけではないのですね。

笹島先生

そうですね。便潜血検査は、あくまで「微小な出血の原因となる大腸の病気がある可能性」を診る検査であって、大腸がんや大腸ポリープがあるかどうかを確定する検査ではありません。実際に病変があるのか、どこから出血しているのかを確認するには、精度の高い大腸カメラが推奨されます。

「便潜血陰性」でも安心しすぎないで!

「便潜血陰性」でも安心しすぎないで!

編集部

では、便潜血検査で陰性が続いている場合は「安心」と考えてよいのでしょうか?

笹島先生

「陰性=大丈夫」とは言い切れません。便潜血検査は、大腸がんによる死亡率を低下させる有用な検査ですが、精度には限界があります。進行大腸がんでも約20%は陰性になるとされており、早期(粘膜層から粘膜下層までにとどまる段階)の大腸がんでは半数程度しか陽性にならないという報告もあります。

編集部

大腸がんやポリープがあっても陰性になることがあるのですか?

笹島先生

あります。特に進行が速い陥凹型(かんおうがた)がんは、ある程度深くもぐりこむまで便潜血検査が陽性になりづらいとされています。横に広がるタイプの平坦型(へいたんがた)がんなども、かなり大きくならないと陽性になりにくいとされています。一方、きのこのように上へ盛り上がる隆起型(りゅうきがた)は、ほかの型に比べて陽性になりやすいといえます。
早期の病変や小さなポリープは、常に出血しているわけではありません。そのため、タイミングによっては便潜血検査で陰性になることがあります。便潜血検査だけに頼らず、大腸そのものを直接観察できる大腸カメラを組み合わせることが重要です。

編集部

やはり、大腸カメラが早期発見につながるわけですね。

笹島先生

そのとおりです。40歳をすぎたら、一度は大腸カメラを受けることを推奨します。早ければ35歳くらいで受け始めてもよいかもしれません。大腸がんは年齢とともにリスクが上がりますし、無症状でもポリープが見つかることは珍しくありません。症状がまったくない場合には基本的に自費検査となりますが、将来の病気予防の観点でも意義のある検査だと思います。

配信元: Medical DOC

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