「渇いてから」では遅い―熱中症予防に必須“戦略的補水”のカギは「先回り」:熱中症特集第2回「予防編」

「渇いてから」では遅い―熱中症予防に必須“戦略的補水”のカギは「先回り」:熱中症特集第2回「予防編」

運動と「水分・塩分」の取り方、そして夏に備える体づくり

夏の運動では、実は始める前からすでに脱水状態、ということが少なくありません。だからこそ「のどが渇いてから飲む」のではなく、先回りの補給がカギになります。

「先回り」と「バランス」を意識

睡眠中の発汗などにより、朝起きた時点で体の水分はすでに失われています。朝のうちに、そして運動の前に水分を取っておく。さらに休憩中にもこまめに飲む。のどの渇きを待つのではなく、意識して水分を取るルーティンを身につけることが大切です。

普段どおり食事を取っていれば、運動のため特別に塩分を足す必要は基本的にありません。熱中症で塩分不足になる主な理由は、塩分の少ない水を大量に飲み、体の塩分が薄まってしまうことにあります。ですから、スポーツドリンクや経口補水液(水分と塩分、糖分などをバランスよく補えるよう作られた飲み物)のように、ある程度の塩分を含むものなら、無理に塩分を足さなくてもかまいません。一方で、水やお茶など塩分の少ないものを大量に飲むときは、意識して塩分も一緒に取るようにしてください。

暑熱順化―「汗をかく習慣」で夏に備える

夏に向けては、暑さに体を慣れさせる「暑熱順化」が役立ちます。暑熱順化が進むと汗をかきやすくなり、その汗もサラサラとして、汗に含まれる塩分の濃度が下がっていきます。その結果、体温を下げやすくなり、塩分の喪失も防げるようになります。

どうすれば暑熱順化が起きるのでしょうか。基本は「汗をかく」ことです。厳しい暑さがやってくる前に、ウォーキングのようなそれほどきつくないけれど少し汗をかく運動を続け、汗をかくことを体に覚えさせていく――これが近道になります。ずっとエアコンの効いた室内にいるだけでは暑熱順化は進みません。涼しいうちから少しずつ慣らしておかないと、暑くなってから急に強い運動をしてはかえって体がへばってしまいます。
ただし、暑さに慣れることで強くはなれますが、それで無制限に活動できるようになるわけではありません。トップアスリートでも、近年は暑い時期の競技開催を見直す流れにあります。東京オリンピックのマラソンが札幌で行われたのは、その典型といえるでしょう。

「暑さを避けて生きるのは難しい」―できることを習慣に

体づくりという観点でお伝えしたいのは、特別なことよりも規則正しい生活そのものが土台になる、ということです。

しっかり睡眠を取り、食事を抜かず、水分をこまめに摂取する。寝不足だったり朝食を抜いたりすると、同じ運動でも熱中症のリスクが高くなるとされています。朝起きたらコップ1杯の水を飲む、といった小さな習慣を積み重ねてください。

お酒にも注意が必要です。アルコールには利尿作用があり、飲んでいるつもりでも体の水分はむしろ失われていきます。翌日に運動の予定があるときは深酒を避け、飲んだときほど意識して水分を取ってください。

今の日本では、暑さを避けて生きることは難しくなっています。暑さの質そのものがかつてとは変わり、暑くなる時期も年々前倒しになっています。だからこそ、屋外と屋内それぞれの注意点を押さえ、子どもや高齢の人には周りが目を配り、水分と塩分を先回りで補い、汗をかく習慣で夏に備える――この積み重ねが、確かな予防につながります。そして、外気温が体温を超えるような日には無理をしないこと。持病のある人は、夏の過ごし方や水分の取り方について、普段からかかりつけの先生に相談しておくと安心です。

配信元: Medical DOC

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