不妊治療、「続ける・休む・やめる」どう決める? 後悔しない選択のヒントを医師が解説

不妊治療、「続ける・休む・やめる」どう決める? 後悔しない選択のヒントを医師が解説

妊娠を望んで治療を始めても、思うような結果が出ず「続けるべきか、休むべきか、やめるべきか」と迷う人は少なくありません。不妊治療には「続ける」以外にも、心身を休める、施設を変える(転院)といった選択肢があります。やめる判断の医学的な目安としては、卵胞が育たない・採卵しても卵子が得られないといったケースが挙げられ、この場合は体への負担を踏まえて方向転換を検討することもあります。後悔しないためには、治療を始める段階で「保険診療の範囲まで」「◯歳まで」「◯年間」など自分なりの区切りを決めておくこと、納得したうえで一つひとつ選択していく姿勢が大切です。村尾産婦人科クリニックの深川真弓先生に、不妊治療との向き合い方と決断のヒントを聞きました。

※2025年11月取材。

深川 真弓

監修医師:
深川 真弓(村尾産婦人科クリニック)

埼玉医科大学医学部を卒業後、久留米大学病院で研修を開始。久留米大学医学部産科婦人科学教室、国立病院機構小倉医療センター、蔵本ウィメンズクリニック、つばきウィメンズクリニックなどで生殖医療に携わり、2025年5月より村尾産婦人科クリニック勤務。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。

不妊治療とその現状

不妊治療とその現状

編集部

不妊治療を受けている人は多いのでしょうか?

深川先生

晩婚化やライフスタイルの変化により、不妊治療を受ける人は増えています。現在、日本では約4.4組に1組のカップルが何らかの不妊治療を経験しているといわれています(国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(2021年)」)。人工授精から体外受精・顕微授精まで幅広い治療が一般的になり、社会的理解や経済的支援も進みました。そのため、治療を受ける状況は特別ではなくなってきています。

編集部

男女どちらにも原因があるといわれますね。

深川先生

そのとおりです。不妊の原因は、女性側と男性側でほぼ同数といわれています。排卵障害や卵管閉塞など女性の要因に加え、男性では精子の数や運動率の低下などが増えています。「女性だけの問題」と考えず、パートナーとともに取り組む姿勢が大切です。

編集部

治療を始めるタイミングはいつごろがよいのでしょうか?

深川先生

避妊をせず1年経っても妊娠に至らない場合は、検査の受診をおすすめします。もし35歳を過ぎている場合は、3カ月〜半年程度で一度専門医へ相談してみてください。年齢が上がると卵子の質が下がり、妊娠の確率も低下するためです。「不妊治療は最後の手段」ではなく、「現状を知る手段」として早めの受診を推奨します。

編集部

経済的な負担も気になります。

深川先生

2022年から一部の不妊治療は保険適用になりました。ただし、年齢や回数に制限があります。施設によって異なりますが、保険診療(3割負担の場合)で1回あたり10万〜25万円程度が目安です。助成金や高額療養費制度を活用すれば、自己負担を軽減できます。費用と時間の両面から、無理のない計画を立てる必要があります。

不妊治療の選択肢

不妊治療の選択肢

編集部

不妊治療の方法について教えてください。

深川先生

排卵を促す「タイミング法」から、精子を子宮に注入する「人工授精」、体外で受精させる「体外受精」や「顕微授精」など、段階的に行われます。どの方法を選ぶかは、年齢や検査結果、生活スタイルなどを総合的に判断して決定します。

編集部

治療のステップアップは、どのように判断されるのでしょうか?

深川先生

一般的には、タイミング法や人工授精を数回行っても妊娠に至らない場合、体外受精へと進みます。ただし、女性の年齢が高い場合や卵巣機能が低下している場合は、最初から体外受精を検討する場合もあります。「焦らずに段階を踏む」のが基本です。しかし、年齢や卵子の状態によっては“時間との戦い”になるため、早めのステップアップ判断も重要です。

編集部

どのくらいの期間で結果が出るものなのでしょうか?

深川先生

不妊治療の期間には個人差があります。早い人では数カ月で妊娠に至る場合もあります。しかし、多くは1〜2年単位で取り組まれます。体質や原因によっては、より長期間の治療が必要になる場合もあります。「すぐに結果が出ない=失敗」ではありません。体調や生活リズムを整えながら、最適な方法を見つけていく過程も治療の一部だと捉えてください。

編集部

治療が長期化すると、心も疲れてしまうと思います。

深川先生

まさにそこが一番の課題です。治療を続けるうちに「なぜ自分だけがこんな思いをしなければならないのか」と感じてしまう人も多い傾向にあります。心の安定はホルモン分泌にもよい影響を与えます。医療機関によってはカウンセリングなどの心理的サポートを行っていますので、探してみてもよいでしょう。

配信元: Medical DOC

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