内容への受け止めは?
編集部
国立がん研究センターが発表した内容への受け止めを教えてください。
中路先生
今回の改訂で最も高く評価したいのは、「日本のがん予防指針」が国際的な標準にまた一歩近づいたという点です。世界保健機関(WHO)はかねてより「アルコールに安全な摂取量は存在しない」と明言しており、欧米各国のガイドラインでも、推奨される飲酒量は年を追うごとに引き下げられてきました。そうしたなかで、日本もようやく「節酒」から「ひかえる」へと一歩踏み込んだわけです。これは、国際的なエビデンスと日本の推奨内容の足並みがそろったという意味で、意義深い変更だと受け止めています。
併せて注目したいのが、「言葉の定義」にまで踏み込んだ点です。「節酒」という表現については、診察の場でも「では、節度ある量とは具体的にどのくらいですか」と尋ねられることが少なくありませんでした。「節度」の受け取り方は人それぞれで、結果として飲みすぎを正当化する余地を残してしまっていた面は否めません。それが「ひかえる」という言葉に置き換わったことで、目指すべき方向性がはっきりし、医療者の立場からも患者さんへ説明しやすくなったと感じています。
また、BMIの基準が見直された背景には、日本人ならではの体質という事情があります。日本人は欧米人と比べて、同じBMIであっても内臓脂肪がつきやすいとされています。加えて、インスリン分泌能も相対的に低いため、軽度の肥満であっても代謝異常やがんのリスクに結びつきやすいことが近年明らかになってきました。
今回、男性のBMI基準が25以下へと引き下げられたのは、アジア人集団を対象としたエビデンスの積み重ねを反映したものといえるでしょう。
最後に、患者さんにぜひお伝えしたいことがあります。それは「ゼロリスクを目指す必要はない」ということです。がん予防は「やるか・やらないか」という二者択一ではありません。「リスクをどこまで下げられるか」という、なだらかなグラデーションのなかで捉えてもらえればと思います。
編集部まとめ
国立がん研究センターは、日本人向けの「科学的根拠に基づくがん予防法5+1」を見直し、お酒は「ひかえる」、男性のBMIは25以下を目安とするなど、新たな推奨を示しました。がん予防は特別なことではなく、毎日の生活習慣の積み重ねが大切です。できることから無理なく取り入れ、健康づくりに役立てていきましょう。
出典:科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
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