「糖尿病性腎症」とはどんな病気?進行すると現れる症状も解説!【医師監修】

「糖尿病性腎症」とはどんな病気?進行すると現れる症状も解説!【医師監修】

糖尿病が長く続くと、全身の細い血管が傷つき、目や神経、腎臓などに合併症を起こすことがあります。その代表的な病気の一つが糖尿病性腎症です。腎臓は自覚症状が出にくく、気付かないうちに機能低下が進むことがあるため、定期的な検査で早めに変化をみつけることが欠かせません。

この記事では、糖尿病性腎症の基礎知識や発症のしくみ、進行の流れ、早期発見のポイントを解説します。

林 良典

監修医師:
林 良典(医師)

【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター

糖尿病性腎症の基礎知識

糖尿病性腎症の基礎知識

糖尿病性腎症とはどのような病気ですか?

糖尿病性腎症は、糖尿病による高血糖が長く続くことで、腎臓の働きが低下する病気です。腎臓には、糸球体という毛細血管が集まった小さなフィルターがあり、血液中の老廃物をろ過して尿を作っています。

左右の腎臓には、この糸球体が多数あり、身体に必要な成分を残しながら、不要なものを尿として排出しています。高血糖の状態が続くと、糸球体の細い血管が傷つき、本来は尿に出にくいアルブミンというたんぱく質が尿中に漏れ出すことがあります。進行すると、老廃物を十分に排出できなくなり、腎機能が低下します。

糖尿病性腎症はどのようなしくみで起こりますか?

糖尿病性腎症は、主に高血糖による血管へのダメージと、腎臓内の血流の変化が重なって起こります。血液中の糖が高い状態が続くと、血管の壁に炎症が起こりやすくなり、糸球体を支える組織にも変化が生じます。その結果、フィルターとしての構造が少しずつ壊れ、アルブミンが尿中へ漏れやすくなります。

また、糖尿病は糸球体にかかる圧力が高くなることがあります。腎臓に入る血管と出ていく血管のバランスが崩れ、糸球体に過剰な負担がかかる状態です。この状態が続くと、糸球体を構成する細胞に物理的な負荷がかかり、腎臓の組織が硬く変化します。こうした変化が積み重なると、腎臓はもとの状態に戻りにくくなり、腎機能の低下につながります。

糖尿病性腎症はなぜ重要視されているのですか?

糖尿病性腎症が重視される理由は、人工透析が必要になる原因の一つだからです。日本では、新たに透析を始める方の原因疾患として、糖尿病性腎症が長年上位を占めています。

腎不全が進んで透析が必要になると、週に複数回の通院治療が必要となり、生活にも大きな影響が出ます。さらに、腎機能の低下は心筋梗塞や脳卒中、心不全などの脳・心血管疾患とも関係します。腎臓の血管が傷ついている状態は、全身の血管にも負担がかかっているサインと考えられます。

糖尿病性腎症の進行と早期発見の重要性

糖尿病性腎症の進行と早期発見の重要性

糖尿病性腎症はどのように進行しますか?

糖尿病性腎症は、いくつかの段階を経て、ゆっくり進行します。初期の第1期は、尿検査に明らかな異常が出ないことがありますが、腎臓内では糸球体に負担がかかり始めています。

第2期になると、通常の尿試験紙ではわかりにくい程度のアルブミンが尿中に漏れ始めます。これが微量アルブミン尿で、腎症を早くみつける手がかりです。

第3期は、尿蛋白がはっきり陽性となり、腎機能の指標であるeGFRが低下し始めることがあります。

さらに第4期に進むと、老廃物の排出が難しくなり、貧血やむくみ、血圧上昇などが現れます。

第5期は、腎臓だけでは身体の状態を保つことが難しくなり、透析や腎移植などの腎代替療法を検討する段階です。早い段階では症状が乏しいため、検査での確認が欠かせません。

糖尿病性腎症の早期発見が重視される理由を教えてください

糖尿病性腎症は、早い段階でみつけるほど、腎機能を守れる可能性が高くなる病気です。特に微量アルブミン尿の段階で発見し、血糖や血圧を適切に管理できれば、尿アルブミンが正常範囲に戻る寛解を目指せる場合があります。

進行して腎臓の組織が硬く変化してからでは、もとどおりに戻すことが難しくなります。

早期発見は、透析を避けるためだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを下げる意味でも大事です。腎臓の変化は、全身の血管の状態を映すサインでもあります。

糖尿病の治療中は、血糖値だけでなく、尿アルブミンや尿蛋白、eGFRを定期的に確認し、腎臓の変化を早めに把握することが、将来の合併症を防ぐことにつながります。

糖尿病から腎症への進行を抑えるにはどうしたらよいですか?

腎症への進行を抑えるには、血糖だけでなく、血圧や脂質、体重、生活習慣を併せて管理することが必要です。血糖管理は、一般にHbA1c 7.0%未満を目標にすることがありますが、年齢や合併症、低血糖のリスクによって目標は変わります。血圧管理も腎臓を守るうえで欠かせず、目標値は患者さんの状態に応じて主治医と確認します。

薬物療法は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)などのレニン・アンジオテンシン系阻害薬が、血圧を下げるだけでなく、腎臓を保護する目的で使われることがあります。ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2阻害薬)も、腎機能低下の進行を抑える薬として使われるようになっています。

生活面においては、減塩、禁煙、体重管理、無理のない運動が基本です。塩分を控えることは血圧管理につながり、腎臓への負担を減らすうえでも意味があります。

配信元: Medical DOC

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