クックパッドは「パンクなカウンターカルチャー」だ
クックパッドについて、湯澤さんは湯澤「パンクなカウンターカルチャー」と表現します。なぜなら、商業出版のレシピ本は最適解を1つに絞り込みます。でも実際は10人いれば10通りの親子丼がある。その多様さをクックパッドはそのまま受け入れているからです。
「クックパッドがやってることがカウンターカルチャーとしてのメッセージのようにも見えます。世の中ってそんな単純じゃないよねって。ちょっとパンクな感じのメッセージを、そこに集積してるレシピ提供してる人たちと一緒に作ってると思うのです」
歴史研究者として湯澤さんが注目するのは、「エゴドキュメント」という概念です。家計簿の余白に書いた愚痴、カレンダーの隅の目標などの超プライベートな記録のことで、公式文書では見えてこない人の本音が宿っています。クックパッドはその集積に見えるといいます。
「普通は見せてもらえない世界を、いとも簡単にみんなが開陳してる。これでいいんだっていう、そういう共有の仕方がすごく大事」
そんな湯澤さんが好きな料理をめぐる言葉を聞いたところ、挙がったのが「賄う」と作家・石牟礼道子さんの言葉「食べごしらえ」です。
「食べるために何かをこしらえて、賄って、融通して、みたいな。その手と時間をかけているプロセスそのものが料理かなと思っているのです」
マニュアル通りに作ることではなく、食材と対話しながら、思考と思想を込めながら、手と時間をかけていくこと。それが料理だと湯澤さんは考えます。
「レシピっていうのは、固定化したマニュアルじゃなくて、人生そのものだと思うと、もっと揺らいでいて当たり前ですよね。それを表現し、伝えているのがクックパッドだと思います」
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第78回・第79回(5月22日・29日配信) 湯澤規子さん
人文地理学者・法政大学人間環境学部教授。博士(文学)/1974年大阪府生まれ、千葉育ち。「生きる」をテーマに地理学、歴史学、経済学の視点から、当たり前の日常を問い直す旅をするフィールドワーカー。主な著書に『胃袋の近代―食と人びとの日常史』(名古屋大学出版会)、同書で生協総研賞第12回研究賞、第19回人文地理学会賞(学術図書部門)を受賞。『7袋のポテトチップス―食べるを語る、胃袋の戦後史』(晶文社)『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』(ちくま新書)『焼き芋とドーナツ―日米シスターフッド交流秘史』(KADOKAWA)、同書で第12回河合隼雄学芸賞を受賞。近刊の共著に『地球のまかないごはん―食・農・風景をめぐる往復書簡』(農文協)『イチからつくる蚊取り線香』(農文協)などがある。
【パーソナリティ】クックパッド株式会社 小竹 貴子
料理愛好家・ 料理の楽しみ共創室 部長/創業期から参画し、初代編集長としてメディアづくりに携わる。現在は、料理家や生産者といった食のつくり手の声を届ける活動を行っている。「日経ウーマンオブザイヤー2010」受賞。プロの技術や食材の背景にある物語を、暮らしに馴染む言葉で伝えることをライフワークに、生活者の目線で食の楽しさを探求している。
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