BCG治療の現実と、「約30年ぶりの新薬」への期待
桜井氏
膀胱がんで話題といえばBCG治療ですね。差し支えない範囲で、お二人にも体験をうかがえればと思います。佐野さんから。
佐野氏
BCG治療は、膀胱内にカテーテルを通してBCGという結核予防のワクチンとして知られる薬液を注入します。膀胱がんでは“最後の手立て”とされ、効果が得られなければ膀胱の全摘出か再建といった方法しかないと説明を受けました。私は治療を終え、今は3カ月ごとの経過観察で毎回、冷や汗をかきながら病院に通っています。幸い、3年ほど再発はありません。
桜井氏
野村さんはどんなご経験でしたか。
野村氏
再発して手術をした後にBCG治療を受けました。BCGが使えなければほかに選択肢がないという、追い込まれた心境でした。副作用のつらさを先生に話して、「もうやめましょう」と言われてしまうと再発・進行したときに次の手がないので、話すのをためらっていました。多くの患者さんも同じだと聞きます。
BCG治療は、回を重ねるごとに痛みと頻尿がどんどん厳しくなりました。私は10回まで続けましたが、痛みや、トイレにこもる生活、夜眠れない状態に、これ以上は危ないと感じました。正直に伝えると、先生からは「10回続けたので効果は期待できる。これ以上は取り返しのつかない副作用が出るおそれもある」と言われました。もし新しい治療法があれば、ここまで無理はしなかったと思います。新たな選択肢が増えていくことを願っています。
桜井氏
生活のしづらさ、特に食事などで困ったご経験はありますか。
佐野氏
水を多く飲んだほうがよいのか、控えたほうがよいのか――患者さんの素朴な疑問に対する答えが、まだ十分に整理されていません。新しい診療ガイドラインに合わせて、患者さんが感じる疑問にどう向き合えばよいかを、先生方と一緒に示せたらと思っています。
桜井氏
患者さんのためのガイドラインも、少しずつ出てきています。膀胱がんでも、学会と一緒にそうした動きが広がるとよいですね。お仕事との両立はいかがでしたか。
佐野氏
私は大学で教えています。治療中は血尿や残尿感があり、90分の授業をもたせるのが難しい時期がありました。学生に正直に話したところ、皆が支えてくれました。
桜井氏
理解のある職場ばかりではありません。工場のラインなどでは、なかなかそうもいきません。この病気が生活を大きく変えてしまうことを、メディアを通じて広く知ってほしいと思います。
患者会と学会が一緒に情報発信を
桜井氏
患者会は、新しい治療法が開発される時期に合わせて生まれることが多いと感じています。体に優しく、生活への影響が少ない治療の選択肢が望まれてきました。これからも患者会と学会の皆さんと一緒に、情報を発信していければと思います。
野村氏
新たな治療の選択肢が増えていくことを願っています。全てのがんの仲間とともに、日本として、世界として、がん患者さんがより自分らしく生きられるよう進めていきたいです。
佐野氏
膀胱がんはなかなか仲間が見つかりません。悩みを打ち明けられる場で、患者さんの素朴な疑問にも先生方と一緒に答えていけたらと思っています。
*本稿には特定の治療法についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や受療促進などを目的とするものではありません。気になる症状や治療の選択肢については、まず主治医にご相談ください。
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