鹿川さんは26歳の若さで、アスベストが原因の希少がん『悪性腹膜中皮腫』と告げられました。膨らみ続ける腹部、相次ぐ手術と再発、そして新たに加わった『胸膜中皮腫』の診断。病と歩んだ22年に及ぶ闘病の記録を語ってくれました。
※2026年5月取材。
体験者プロフィール:
鹿川さん
沖縄県在住、1977年生まれで犬1匹と一人暮らし。診断時の職業は保育士。2004年に卵巣がんの疑いで手術したことがきっかけで、その1カ月後に『悪性腹膜中皮腫』と診断され、抗がん剤治療後の2007年に腹膜切除の手術を受ける。手術や再発、治療を経ながらも、途中、幼稚園教諭として復帰し、現在は再び保育士として働いている。
どんどんと膨らむ腹部
編集部
『悪性腹膜中皮腫』はどんな病気ですか?
鹿川さん
悪性中皮腫はアスベスト(石綿)の吸入から発症まで20〜50年程度かかるといわれ、数十年経ってから発症する病気です。中皮腫全体では胸膜中皮腫の割合が多く、腹膜中皮腫は少数です。私は仕事などでアスベストと接することもなかったし、26歳で発症したということもあって、かなりまれなケースのようでした。
編集部
最初に気づいたのは、どのような症状でしたか。
鹿川さん
食欲がないのにおなかだけが大きくなり、体重が増加するといった症状がありました。最初は元々太っていたため気にしていなかったものの、少しずつ吐き気も出るようになり、周りから「おめでたですか?」とよくいわれるようになったため、自分の体を気にし始めました。
編集部
そこから診断にいたるまでの経緯を教えてください。
鹿川さん
胃が悪いと思い、近所の内科を受診しました。医師がおなかの大きさに違和感を覚えたようで、追加で腹部エコー検査を受けた結果、大量の腹水が見つかり、総合病院を紹介されました。その後、卵巣腫瘍かもしれないため大学病院へ転院しました。2004年に卵巣がんの疑いで手術を受けましたが、卵巣に問題はありませんでした。しかし、その手術で腹膜に異常が見つかったため、検査を経て『悪性腹膜中皮腫』と診断されました。
編集部
診断時、医師からはどのような説明がありましたか?
鹿川さん
アスベストによる『腹膜のがんです』と説明されました。「腹膜中皮腫は臓器を覆っている膜に腫瘍ができる珍しい病気で、治療法が確立されていないため、今後どうするかを考えましょう」といわれました。
「何で私が? 死んじゃうの?」
編集部
診断されたときはどのような気持ちでしたか?
鹿川さん
頭が真っ白になり「何で私が? 死んじゃうの? アスベストって何?」と涙が止まりませんでした。説明も頭に入らず、どうやって病室に戻ったのかも記憶にありません。
編集部
診断後、どのような治療を受けましたか?
鹿川さん
2004年に腹膜中皮腫のための手術前治療を開始。抗がん剤治療を14クール行った後、2007年に大阪で腹膜中皮腫の1回目の手術を受け、人工肛門を造設しました。術後も同じ抗がん剤治療を続け、2010年に人工肛門を閉じ、幼稚園教諭として社会復帰しました。しかし、2016年に再発し、再び手術前の抗がん剤治療と2回目の手術を受け、術後にも同じ抗がん剤治療を行いました。
編集部
2回目の手術の後の経過はいかがでしたか?
鹿川さん
2022年に熱や息苦しさから病院を受診し、検査を受けた結果、『胸膜中皮腫』の診断が下りました。免疫チェックポイント阻害薬(がん細胞が免疫細胞にかけるブレーキを解除し、体本来の免疫でがんを攻撃させる薬)を試しましたが、副作用(肝障害、心不全)が起こり、断念しました。その後、2023年に抗がん剤治療を再開し、現在も腹膜中皮腫と胸膜中皮腫の治療を4週間隔で続けています。
編集部
診断時は、ご病気についての情報もない状態で不安でしたよね。
鹿川さん
病気がわかったときは、情報が少なすぎて戸惑いと不安しかありませんでした。しかし、現在では情報も増え、少しずつ自分の病気と向き合えるようになりました。また、22年経った現在も抗がん剤治療を続けており、この病気の怖さを改めて感じています。

