健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘されると、どの診療科を受診すればよいのか迷う方は少なくありません。糖尿病は、初期には自覚症状が乏しい一方で、放置すると眼、腎臓、神経、心臓、脳、足などに合併症を起こすことがあります。大切なのは、疑いの段階で自己判断せず、早めに医療機関で再検査を受けることです。ここでは、糖尿病の基本、主な受診先、受診の際に役立つ準備を解説します。

監修医師:
高宮 新之介(信州大学医学部附属病院 呼吸器外科)
昭和大学(現・昭和医科大学)卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、日本外科学会専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事する中、医学博士を取得。昭和大学横浜市北部病院(現・昭和医科大学横浜市北部病院)呼吸器センターを経て、現在は信州大学医学部附属病院 呼吸器外科に勤務。肺がんを中心とした呼吸器外科診療、低侵襲手術、肺がん術後QOL、術前心理状態と術後疼痛に関する研究に取り組む。日本外科学会専門医、日本呼吸器外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。
糖尿病とはどのような病気か

糖尿病とはどのような病気の総称か教えてください
糖尿病は、インスリンが十分に働かず、血液中のブドウ糖である血糖が高い状態が続く病気です。インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖を一定の範囲に保つ役割があります。食事から吸収された糖は血液に乗って全身へ運ばれ、インスリンの助けで筋肉や脂肪などの細胞に取り込まれます。糖尿病は、インスリンの量が不足する、またはインスリンが効きにくくなるため、糖が血液中に残りやすい状態です。
糖尿病にはどのような分類があるのですか?
糖尿病は、成り立ちにより大きく1型糖尿病、2型糖尿病、そのほかの特定の機序、疾患によるもの、妊娠糖尿病に分けられます。1型糖尿病は、膵臓でインスリンを作る細胞が壊れ、インスリンがほとんど出なくなる病気です。若い年代で発症しやすいものの、どの年代でも起こります。インスリン注射が必要になることが多く、急にのどの渇きや体重減少が出る場合があります。2型糖尿病は、日本でよくみられるタイプです。インスリンが出にくくなる、または効きにくくなることで血糖が高い状態です。遺伝的な要因に加え、食べ過ぎ、運動不足、肥満などが関係しますが、やせ型の方にも起こります。初期には症状が乏しく、健診でみつかることがあります。治療は、食事、運動、飲み薬、注射薬を状態に応じて組み合わせます。
そのほか、膵臓、内分泌、肝臓の病気、薬剤の影響、遺伝子の異常などで血糖が高くなる糖尿病もあります。妊娠糖尿病は、妊娠中に初めてわかった、糖尿病にはいたっていない血糖の上昇です。出産後に血糖が戻ることもありますが、将来の糖尿病リスクが高くなるとされています。分類によって治療方針が変わるため、自己判断で2型糖尿病と決めつけず、検査結果や経過をもとに診断を受けましょう。
糖尿病で起こる主な合併症にはどのようなものがありますか?
糖尿病の合併症には、長い時間をかけて進む慢性合併症と、短期間で命に関わることがある急性合併症があります。慢性合併症は、血糖が高い状態が何年も続くことで血管が傷つき、血流が悪くなることで起こります。細い血管が障害される細小血管症には、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症があります。しびれ、痛み、感覚の低下、視力低下、腎機能低下などにつながるため、症状がなくても定期検査が必要です。
太い血管が障害される大血管症には、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患、足病変などがあります。糖尿病は血管が硬く狭くなりやすく、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満が重なると血管への負担が増えます。足の傷に気付きにくく、感染や壊疽に進むこともあるため、足の観察も大切です。
急性合併症には、糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群があります。強いのどの渇き、尿量の増加、強いだるさ、吐き気、腹痛、意識がぼんやりするなどがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。意識障害や強い脱水が疑われる場合は、救急受診が必要です。
参照:
『糖尿病とは』(糖尿病情報センター)
『糖尿病は早く見つけましょう』(糖尿病情報センター)
糖尿病で受診するときの主な診療科

糖尿病が疑われるときはまず何科を受診すればよいですか?
健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された場合は、まず内科を受診するとよいでしょう。糖尿病を専門的に扱う診療科が近くにある場合は、糖尿病内科、内分泌代謝内科、代謝内科なども受診先の候補です。かかりつけ医がいる方は、まず相談し、必要に応じて糖尿病を扱う外来へ紹介してもらう方法もあります。
糖尿病内科と内分泌代謝内科ではどのような診療を行うのか教えてください
糖尿病内科では、血糖値、HbA1c、尿検査、腎機能、脂質、血圧、体重、合併症の状態を確認しながら、血糖を望ましい範囲に保つための治療を行います。治療の中心は、食事療法、運動療法、薬物療法です。2型糖尿病は、食事や運動を見直し、血糖の推移を見ながら飲み薬や注射薬を組み合わせます。1型糖尿病やインスリン分泌が不足している場合は、インスリン注射が必要です。
内分泌代謝内科は、糖尿病だけでなく、甲状腺、副腎、下垂体などのホルモンの病気、脂質異常症、肥満症、骨やカルシウム代謝の異常なども扱う診療科です。
糖尿病のなかには、ホルモンの病気や薬剤の影響で血糖が高くなるものもあるため、内分泌代謝内科では背景にある原因も含めて評価しやすい場合があります。
糖尿病専門医とはどのような医師ですか?
糖尿病専門医は、日本糖尿病学会などの専門医制度に基づき、糖尿病診療に関する研修、経験、試験、更新などの要件を満たした医師です。専門医は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、合併症を伴う糖尿病、インスリン療法が必要な糖尿病など、専門的な判断が必要な場面で診療に関わります。ただし、専門医を受診すれば血糖がすぐ下がる、合併症を完全に防げる意味ではありません。糖尿病の治療は、医師だけで完結するものではなく、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、眼科医、腎臓内科医、循環器内科医などと連携して進めることがあります。
専門医は、連携の中心になり、治療方針や検査計画を記載する役割を担います。
専門医への相談を考えたいのは、血糖がなかなか安定しない場合、低血糖を繰り返す場合、インスリン導入を提案された場合、妊娠中または妊娠を希望している場合、腎症や網膜症などの合併症がある場合です。
参照:
『糖尿病の治療ってどんなものがあるの?』(糖尿病情報センター)

