二重の闘病経験から芽生えた「恩返し」の気持ち
編集部
現在はどのような治療を受けていますか?
榎さん
現在は、9月から始まった分子標的薬の皮下注射を3週間ごとに1回受けており、残り10回です。初回の化学療法では、ドセタキセルと併用して3カ月(4クール)を終えていたため、術後は残り9カ月(13クール)をこなしていきましょうと説明を受けました。分子標的薬は合計で1年間続ける予定です。
使用しているのは「フェスゴ」という2種類の分子標的薬が合わさった薬です。大腿部に5〜8分ほどかけてゆっくり皮下注射します。注入中は多少の痛みがあります。しかし、看護師さんとの会話で気を紛らわしている間に済み、すぐに帰れるため、気持ち的にはとても楽に感じます。抗がん剤のときのような強い副作用はなく、数日の痛みやお腹の不調などはあるものの、日常生活では治療中であるのを忘れてしまいそうなほどです。
編集部
治療を続ける中で、体の状態はいかがですか?
榎さん
手術した側の腕は完全には元通りに動かせず、可動範囲はかなり狭くなってしまいました。リンパ浮腫への不安もあり、重いものを持たないように気をつけています。また、治療開始以降全身の体力や筋力が落ちているのを実感しており、だるさも強く感じます。
治療が進むにつれて年齢も重ねていくため、「今が一番若い!」と自分に言い聞かせながら、体力を取り戻していきたいと思っています。
編集部
闘病の経験を通して、ピアサポーター(同じ病気や境遇を経験した人が、仲間としてサポートを行う)の活動を検討しているそうですね。
榎さん
はい。子どもの闘病と自分自身の闘病という二重の経験を通して、周囲の人から語り尽くせないほどの優しさをもらいました。だからこそ、私からも何か少しでも恩返しができたらという思いがあり、ピアサポーターの活動を始める予定です。
優しさの循環に貢献できたらうれしいですし、困ったときには誰かに手を伸ばしてみてほしいと心から思います。必ず力を貸してくれる人はいます。
編集部
医療従事者に望む要望はありますか?
榎さん
主治医の先生をはじめ、他科の医師や看護師さん、ソーシャルワーカーさんなど、関わってくださっている医療従事者の皆さんには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
一つ挙げるとすれば、患者の状態を統括的に診て判断してくれる役割の人がいれば、より安心できるのではないかと思います。大きな病院では各診療科の専門医がそれぞれの分野を診てくれます。しかし、他科にまたがる症状には反応が薄く、あちこちで何度か同じ話をしなければならない場面もありました。もちろん、重篤な症状にはしっかり対応してもらえています。それでも、患者が一度その症状を話せば適切な診療科へスムーズに振り分けてくれる相談役のような存在があれば、もっと安心して治療に臨めるのではないかと感じています。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
榎さん
病気が判明したとき、ショックを受けるのは誰でも当然です。しかし、自分を責める必要はありません。この体験から自分は何を得られるのか。じっくりと自分の心と体に向き合う時間として、心が喜ぶのは何か、逆に何を嫌うのかを探しながら、少しずつでも前に進んでいってほしいと思います。
編集後記
乳がんの告知を受けたとき、深い悲しみに包まれながらも「自分にできる対策はすべて行おう」と決めた榎さん。体調がすぐれない日々の中でも楽しめる行動を見つけ、無理に前向きになろうとせず、つらい気持ちは言葉や行動で吐き出しながら過ごしてきました。少しでも気持ちが上がる行動を積み重ね、どんなときも自分を好きでいる姿勢。それが闘病を支える力になったと語っています。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学乳腺外科病院)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
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