育児にしっかり関わるかどうかで、妻への気持ちが変わってくる
――気になったことを書き留めたネタ帳的なものに、自らの見解を加えていくということですね。あと、SNSで見たパパやママからの声に対するご自身の見解を発信された動画も印象に残りました。パパ側の「ママって偉そうすぎない?」という声に対する「いや、そうじゃないんだよ」という見解であったり。おれとうちゃん:そうですね。自分が育児の内側にがっつり入らなかったら、SNSでよく見る「家にいるだけで、なんでそんな偉そうなの?」という感情が僕のなかにも芽生えていたかもしれないですしね。
――内側に入る入らないで、そこの考え方は変わってくると思います。ちなみに、このSNS活動について奥様からはどんな反応がありますか?
おれとうちゃん:「いいじゃん」ぐらいで特別大きな反応はなかったのですが、最近は変わってきました。「なんか、話すことないかなあ」と言っていると「この話は?」って積極的に提案してくれるようになったんです。それどころか、私が家にいない間に起こったおもしろいことを箇条書きでLINEで送ってきたこともあります(笑)。
――2人で企画会議みたいなこともしているのでしょうか?
おれとうちゃん:企画会議というほどじゃないですけど、「この話どう?」と言ってくるぐらい積極的というか、奥さん自身も楽しんでいそうだなという印象はあります。
「おれとうちゃん」と芸人活動をつなげないようにしている理由
――おれとうちゃんのアカウントを閲覧しているだけだと、父ちゃんの正体が芸人さんだと知らない人も多そうです。おれとうちゃん:はい、めちゃくちゃ多いです。ただ、自分が育児にがっつり入ってみてわかったのですが、視聴者のなかで以前触れていたエンタメから一旦離れなきゃいけなくなった育児中のママもいるんですね。そういう人たちにあまり優しくないと思って、このアカウントは芸人活動とあまりつなげないようにしています。
――視聴者のなかには、お笑いファンのママも多いと思います。そういう意味で、あまりアピールしちゃうと……という配慮があるわけですね。
おれとうちゃん:そうですね。「応援しているけれど、どうしてもライブには行けない」という人もなかにはいるので。
パパvsママの戦争を終わらせることが目標
――おれとうちゃんとして、なにか目標のようなものはありますか?おれとうちゃん:めちゃくちゃデカいこと言ってしまうと、「ママvsパパの戦争を終わらせたい」じゃないですか(笑)?
――おおーっ!
おれとうちゃん:パパとママの相互のすれ違い、嫌な部分をできればなくしたいというのが本当の夢です。
――それは壮大な……。かなり難しいことのような気がします(苦笑)。
おれとうちゃん:そうなんですよ、無理なんですけど(苦笑)。
――無理!
おれとうちゃん:どうしたって無理なんですけど、せめて私と出会ってくれた人が「うちの旦那はこうでこうでこうだから嫌なんです」と言っていたら「それは良くない! でも、わかるけどここは我慢してあげられないかな」と言ってあげたいし、パパ側から「奥さんがこういう態度のとき、どうしたらいいかわかんない」と言われたら「とりあえず、こうしておいたらすべて丸く収まるぜ」と伝えてあげたいです。
――いいですね。
おれとうちゃん:自分の手の届く、目の届く、耳の聞こえる範囲だけでも穏やかな家庭が1個でも増えれば……と思っています。
――私は独身ですが、SNSを見ているだけで「パパとママの分断が進んでいる」と感じます。
おれとうちゃん:そうなんですよ。「SNSでパパとママが悪口を言い合っているのを見て、誰が結婚したくなるんだ!?」って思いますから(苦笑)。
投稿を見た20歳男性が「お父ちゃんになりたい!」
――おれとうちゃんの投稿に対する反響は、やはりママからが多いですか?おれとうちゃん:やっぱりママからが多くて、パパからはほとんどないです。7月におれとうちゃんとしてイベントを開催するのですが、チケット予約時のアンケート回答を見ると、ママからは「おれとうちゃん、ずっと見てます。当日は旦那を連れていきますので、どうすれば素敵な夫になれるかをみっちり教えてください」と書いてある。でも、もう一方のパパからは「妻に言われたので来ました」って(笑)。
――その辺、育児の背負い方が表れている気がしますね(笑)。
おれとうちゃん:でも、僕は「妻に言われて来ました」と言って来るご主人も素晴らしいと思うんです。「いや、一人で行っておいでよ」で済むようなことを、「あなたがそこまで言うなら行くよ」と来てくれるわけですから、感謝ですね。
――その見解、まさに中立国ですね。
おれとうちゃん:そういえば以前、「今日、20歳になりました。最近、ずっとおれとうちゃんの動画を見ていて、僕もいつか絶対にお父ちゃんになりたいと思いました」と言ってくれた男の子がいたんです。
20歳になったばかりで結婚はまだ遠い子が、私の投稿をきっかけに父ちゃんという存在に憧れを持ってくれた。それがすごく感慨深かったし、めちゃめちゃ感動したのを覚えています。
――いい種を撒けていますね! SNSだけ見ているとどうしてもネガティブな気持ちになっていくので、おれとうちゃんにはそうではない動画も発信してほしいです。
おれとうちゃん:そうですね。
育児の内側に入ることで初めて、楽しさがわかる
――「世のパパたちはもっとこういうふうに育児するべきじゃないか」という思いはありますか?おれとうちゃん:今、育休って結構どこでも取れるじゃないですか。本当……マジで、取ったほうがいいと思います! もちろん、奥さんと話し合った結果取らない男性もいると思うのですが、そこで「ちょっと待ってくれ、取らせてくれ」と言ってでも取ったほうがいいです。
「休みの日は自分のしたいことを我慢して奥さんのお手伝いをする」という考え方こそ負の根源だと僕は思っていて。そうではなく、ちゃんと中に入ってがっつり育児してみる。そうするともちろんしんどさも感じますが、めちゃくちゃおもしろいこともあるというか(笑)。
――ああ、いいですね。
おれとうちゃん:離乳食の裏面を見て「これとこれとこれが食べれたということは、これとこれとこれはもうクリアってことでいいじゃん」と、スタンプラリーみたいな感覚で離乳食をあげたり、そんな小さな気づきを奥さんと共有しつつ一緒に育児するのってめちゃくちゃ楽しい。
そんなふうに中に入ったことで、僕は「育児が趣味」みたいな感覚になれちゃったんです。
――へえ!
おれとうちゃん:「休みに奥さんを手伝うことが育児」という認識ではなく、「自分がしたくて育児をやってる」の状態へ持っていくために、育休はマジでおすすめです。
――がっつり育児をやらないと、その楽しさも気づけないですよね。片足だけ突っ込んでいたら、嫌々のモードが続いていく。
おれとうちゃん:そうなんですよね。どうせ山登りを趣味にするんだったら、低い山やロープウェイで登れる山だけじゃなく、自分の足で登れる険しい山を探したほうがいい……という感覚に似ているというか。過酷であればあるほど、趣味になったときに喜びも感動もめちゃくちゃ多くなります。
保育園選び「ママが良いところでいいよ」は優しさではない
――加えて、がっつり育児に向き合わないとママとの共有もできないですもんね。おれとうちゃん:そうなんですよね。だから結局、指示を待つだけになる。
――たとえば、離乳食に関しては準備されたものをあげただけで「俺はやってあげた」と思うパパは多いです。でも、今の話のように裏面を見て「これはまだ食べてないから気をつけなきゃ」と判断する。それも含め、初めて離乳食をあげたことになる。でも、そんな“思考の労働”はすべて女性がやっている……というママ側の不満はよく聞きます。
おれとうちゃん:“思考の労働”、めっちゃわかります! なぜか知らないけど、“思考の労働”を放棄するんですよね。保育園選びでも見学についていくのは簡単だけど、結局「ママが見て一番良かったところでいいよ」って、悪気なく言う。これも思考の放棄ですし。
でも、俺、言っちゃったんだよなあ……。1人目のとき、「あなたがいいと思う保育園にしようよ」って言ってしまいました。
――それを優しさだと思ってしまうのでしょうね。
おれとうちゃん:そうですよ、バカなので! それが優しさなわけないんですけどね。
――すべての責任が自分に来て、それがしんどいというママ側の感覚はあるかもしれないですね。
心穏やかになるために大事な気持ちの発散と放出
――今の話を踏まえ、おれとうちゃんが子育てで大事にしていることを教えてください。おれとうちゃん:なるべく心穏やかに……ですね。「心を穏やかに保つため」という目的でおれとうちゃんのSNS発信を始めたところもあるので。
――やっぱり、イラっと来る瞬間はありますか?
おれとうちゃん:めちゃくちゃあります。1歳と3歳の子どもにイラっとするのは大人として変なんですけど、やっぱりイラっとしちゃうんですよ。
1歳の子どもが床に食パンを叩きつけるのって、どうやら普通のことらしいんです。でも、朝の忙しい時間に「なんで、また床に食パンがあるの!?」とイライラした気持ちを子どもや妻にぶつけても、いいことなんて1個も生まれない。だから、なるべく心穏やかに。
ただ、心を穏やかにするにしても自分のなかに溜まったエネルギーは外に出さなきゃならない。だから、僕はこれからもTikTokやInstagramの動画で発散していきます。
――ママの立場として考えたら、子どもが食パンを叩きつけるのを自分一人だけで受け止めていたらフラストネーションが溜まるでしょうね。
おれとうちゃん:それは僕もめちゃくちゃ共感できたので、育児するうえで放出するとことの大切さは啓蒙していきたいと思います。
――夫婦で分かち合うことも大切ですね。
おれとうちゃん:はい。
<取材・文/寺西ジャジューカ>
【寺西ジャジューカ】
1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレス、ドラマ評。『証言UWF 最後の真実』『証言UWF 完全崩壊の真実』『証言「橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言1・4 橋本vs.小川 20年目の真実 』『証言 長州力 「革命戦士」の虚と実』(すべて宝島社)で執筆。

