「糖尿病性腎症」は何の数値で診断される?検査法についても解説!【医師監修】

「糖尿病性腎症」は何の数値で診断される?検査法についても解説!【医師監修】

糖尿病がある方にとって、糖尿病性腎症は気を付けたい合併症の一つです。初期には自覚症状が乏しく、気付かないうちに腎機能が低下し、進行すると透析が必要な末期腎不全に至ることがあります。一方で、尿検査や血液検査を定期的に行うことで、早い段階から腎臓の変化をつけられる可能性があります。

この記事は、糖尿病性腎症がどのように診断されるのか、検査の種類や判定基準、ほかの腎臓病との見分け方を解説します。

林 良典

監修医師:
林 良典(医師)

【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター

糖尿病性腎症の診断に用いる検査

糖尿病性腎症の診断に用いる検査

糖尿病性腎症の診断ではどのような検査を行いますか?

糖尿病性腎症の診断は、尿検査と血液検査が中心です。尿検査は、尿中に漏れ出るアルブミンという蛋白の量を調べます。血液検査は、血清クレアチニンなどから推算糸球体濾過量(eGFR)を算出し、腎臓が血液をどの程度ろ過できているかを確認します。

また、糖尿病の経過年数、血糖や血圧の管理状況、糖尿病網膜症の有無なども確認します。典型的な糖尿病性腎症は、糖尿病の発症からある程度の期間を経て現れます。糖尿病網膜症を伴うこともあるため、眼科の検査結果も診断の手がかりです。

必要に応じて腹部超音波検査などの画像検査を行い、腎臓の形や大きさに異常がないかも確認します。尿と血液の数値だけで決めるのではなく、全身の状態と経過も参考にします。

なぜ尿アルブミン検査が重要なのですか?

尿アルブミン検査が重要な理由は、一般的な尿蛋白検査ではみつけにくい、初期の腎臓の変化をとらえやすいからです。腎臓には糸球体という小さなフィルターがあり、糖尿病によってこの部分が傷つくと、本来は血液中に保たれるアルブミンが尿へ漏れ出し始めます。

健康診断などで行われる尿蛋白の試験紙法は、蛋白尿がある程度増えないと反応しにくい検査です。一方、尿アルブミン検査は、それより少ない段階の漏れを確認できます。この状態を微量アルブミン尿と呼び、糖尿病性腎症の早期サインとして扱います。この段階でみつかれば、血糖管理や血圧管理、薬物療法を見直すことで、腎症の進行を抑えられる可能性があります。

血液検査では何をみるのか教えてください

血液検査は、腎機能を評価するために血清クレアチニンを確認します。クレアチニンは筋肉から出る老廃物で、腎臓の働きが低下すると血液中にたまりやすくなります。この値に年齢や性別を加えて計算したものがeGFRで、腎臓のろ過能力を評価する指標です。
必要に応じて、シスタチンCを測定することもあります。クレアチニンは筋肉量の影響を受けるため、筋肉量が少ない高齢の方や、筋肉量が多い方は、実際の腎機能と数値にずれが出ることがあります。シスタチンCは筋肉量の影響を受けにくく、より詳しく腎機能を評価したい場合に用いられます。そのほか、貧血の有無、カリウムやリン、カルシウムなどのミネラルバランス、血糖管理の指標であるHbA1cも確認します。

診断の基準値と判定の流れ

診断の基準値と判定の流れ

尿アルブミン値の基準値はどのくらいですか?

尿アルブミン値は、随時尿を用いて尿中アルブミン/クレアチニン比、mg/gCrとして判定するのが一般的です。基準は大きく3つに分けられます。30mg/gCr未満は正常アルブミン尿、30〜299mg/gCrは微量アルブミン尿、300mg/gCr以上は顕性アルブミン尿に分類されます。

30〜299mg/gCrの微量アルブミン尿が確認されると、糖尿病性腎症の第2期(微量アルブミン尿期)にあたります。この時期は自覚症状がないことがほとんどですが、腎臓のフィルターに変化が起き始めている状態です。300mg/gCr以上になると第3期(顕性アルブミン尿期)にあたり、腎機能低下や心血管疾患のリスクにも目を向ける必要があります。

eGFRはどのように判定の指標になりますか?

eGFRは、尿アルブミンと並んで糖尿病性腎症の病期を判断するための指標です。腎臓が血液をろ過する力を推定する数値で、慢性腎臓病(CKD)の判定にも使われます。一般に、eGFRが60mL/分/1.73m2未満の状態が3ヶ月を超えて続く場合、CKDと判断されます。
糖尿病性腎症の分類においては、尿アルブミン値にかかわらず、eGFRが30mL/分/1.73m2未満になると第4期(腎不全期)にあたります。この段階は、老廃物や余分な水分を排出する力が低下し、むくみ、貧血、高血圧などがみられることがあります。1回の数値だけでなく、eGFRの低下速度をみると、治療を強化する時期や腎臓の専門の医師に相談する時期を判断しやすいです。

糖尿病性腎症とほかの腎臓病との見分け方を教えてください

糖尿病がある方でも、腎機能低下の原因が必ず糖尿病性腎症とは限りません。糸球体腎炎など、別の腎臓病が隠れていることもあります。そのため、検査値の変化や合併症の有無をもとに、鑑別診断を行います。

見分けるうえでの手がかりは、糖尿病網膜症がない場合、尿沈渣で多数の変形赤血球や顆粒円柱がみられる場合、糖尿病の経過と合わない急な蛋白尿やeGFR低下がある場合などです。例えば、糖尿病の発症から短期間で蛋白尿が出る、蛋白尿が急に増える、腎機能が短期間で悪化する場合には、糖尿病性腎症以外の病気も考えます。

治療を行っても尿蛋白が改善しない場合や、別の腎臓病が疑われる場合には、腎生検を検討します。腎生検は、腎臓の組織を調べ糖尿病に特徴的な変化があるか、ほかの腎炎などがあるかを確認します。

配信元: Medical DOC

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