娘たちが3歳と1歳のころのことです。当時、3歳の娘は乗り物に夢中で、特にバスや電車が大好きでした。毎日のように絵本を読み、部屋中に積み木やレールを並べて遊んでいた娘が、ある日もじもじしながら「本物のバスに乗ってみたい」と言ったのです。
その一言がうれしくて、夫と予定を合わせ、近所の停留所から短い距離だけ“初めてのバス体験”をすることにしました。しかし、そのささやかなお出かけが、家族にとって忘れられない恐怖体験へと変わってしまったのです。
憧れの「初バス」が一転!?突然の怒鳴り声
当日、朝から娘はそわそわしていました。家の近くのバス停には誰もおらず、待っているのは私たち家族だけ。お気に入りのバスの絵本を抱え、「もうすぐバス来る?」と何度も聞いてくる姿に、「連れてきてよかったな」と思いました。
やがて、山間を走る小さな路線バスが見えてきました。目を輝かせながら到着を待つ娘。しかし、扉が開きバスに乗り込んだ直後、外から突然「俺も乗るぞぉ!」という大声が響き渡ったのです。
乗り込んできたのは、顔を真っ赤にして怒鳴る60代くらいの大柄な男性でした。片手に寿司、もう片方には500mlの缶ビールを持ち、車内にはふわっとお酒の匂いが漂います。その姿を見た瞬間、嫌な予感しかしませんでした。
逃げ場のない車内で恐怖に耐え…
男性は席に座るなり缶ビールを開け、一気に飲み干すと「これは俺のバスだぞ!勝手に乗るんじゃねぇ!」と車内で怒鳴り始めました。静かだった車内に怒声が響き渡ります。
3歳の娘は完全に固まり、1歳の娘も異変を察したのか黙り込んでしまいました。酔っぱらいに絡まれるだけでも怖いのに、すぐ隣には幼い子どもたちがいます。逃げ場のない車内で、私は「お願いだから何も起きないで……」と最悪の事態を想像しながら祈るしかありませんでした。
幸い、男性は怒鳴るだけで手を出してくることはありませんでしたが、私たちは次の停留所で慌てて降りました。その間も「何ジロジロ見てんだよ!」と叫ぶ男性に対し、私は子どもたちに「目を合わせないようにね」と小声で伝えるのが精いっぱいでした。

