「橋本病」を発症すると「首の腫れ」にどのような特徴が現れるかご存知ですか?

「橋本病」を発症すると「首の腫れ」にどのような特徴が現れるかご存知ですか?

鏡をみたときや周囲から指摘されたときに、首の腫れに気付き、不安になる方は少なくないでしょう。首の前側、のどぼとけのすぐ下には甲状腺があります。甲状腺は蝶が羽を広げたような形をした小さな内分泌臓器で、甲状腺全体が腫れる原因のひとつに橋本病があります。橋本病は、免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こります。首の腫れだけで甲状腺ホルモンの分泌が保たれている方もいますが、なかには甲状腺がんや悪性リンパ腫など、別の病気が隠れていることもあります。

この記事は、橋本病で首が腫れるしくみ、腫れの特徴、痛みやしこりの有無、甲状腺がんや悪性リンパ腫などほかの病気との見分け方、受診の目安を解説します。

林 良典

監修医師:
林 良典(医師)

【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター

橋本病と甲状腺の腫れ

橋本病と甲状腺の腫れ

橋本病とはどのような病気ですか?

橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症が起こる自己免疫疾患で、医学的には慢性甲状腺炎と呼ばれます。本来、免疫は外敵から身体を守る仕組みですが、橋本病は免疫システムに異常が起こり、甲状腺を攻撃する自己抗体が作られます。その影響で甲状腺に炎症が続くと、甲状腺の組織が少しずつ傷つき、線維化が進むことがあります。進行すると、甲状腺ホルモンを十分に作れない甲状腺機能低下症に至る場合があります。

橋本病で首が腫れるしくみを教えてください

橋本病で首が腫れる主な理由は、甲状腺で続く炎症によって、組織の構造が変化するためです。甲状腺内にリンパ球などの免疫細胞が入り込み、炎症を修復する過程で線維組織が増えます。また、残っている甲状腺細胞が補うように大きくなることもあります。

こうした変化が甲状腺全体に広がると、甲状腺がもとの形を保ちながら大きくなります。これをびまん性甲状腺腫大といいます。橋本病は、一部だけが丸く腫れるというより、甲状腺全体が広がるように腫れることが特徴です。ただし、左右の腫れ方が完全に同じとは限らず、片側が目立つこともあります。

橋本病はどのような方に多くみられますか?

橋本病は、女性にみられやすい病気です。成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人にみられ、男女比は1:20〜30程度とされています。年齢は20代後半以降にみられ、30〜40代で診断される方が少なくありません。一方で、年齢があがってからみつかることもあります。
参照:『橋本病(慢性甲状腺炎)』(日本内分泌学会)

橋本病による首の腫れの特徴と注意点

橋本病による首の腫れの特徴と注意点

橋本病による首の腫れにはどのような特徴がありますか?

橋本病による首の腫れは、甲状腺の右葉と左葉が全体的に腫れるびまん性甲状腺腫大が特徴です。ただし、必ずしも左右対称ではありません。片側が目立って腫れたり、甲状腺の真ん中にある峡部や、上方に伸びる錐体葉と呼ばれる部分が目立ったりすることもあります。
触ったときの硬さは病気の時期によって異なりますが、典型的にはゴムのような弾力のある硬さです。やわらかく触れる場合もあれば、かなり硬く感じる場合もあります。表面はなめらかなこともありますが、炎症や線維化の影響でデコボコに触れることもあります。また、周囲の組織に強くくっついておらず、つばを飲み込む動きに合わせて腫れが上下に動く可動性があることも特徴です。

触ったときに痛みやしこりはありますか?

橋本病による甲状腺の腫れは、通常は痛みを伴いません。首の前側が全体的に腫れていることで気付く場合が多く、押したときに強く痛むことはあまりありません。また、橋本病そのものは甲状腺全体が腫れる病気のため、通常は単独のしこりとして触れる病気ではありません。

ただし、甲状腺の表面がデコボコしていると、複数のしこりがあるように感じることがあります。さらに、橋本病の患者さんに濾胞腺腫や腺腫様結節などの良性腫瘍、甲状腺がんが合併することもあります。急に腫れが大きくなる、強い痛みがある、一部だけ硬く触れる、飲み込みにくさや声のかすれを伴う場合は、橋本病だけで判断せず、超音波検査で詳しく確認します。

甲状腺がんなどの病気との見分け方を教えてください

橋本病による腫れは、甲状腺全体が広がるように腫れ、つばを飲み込むと上下に動くことが特徴です。一方、甲状腺がんは、甲状腺の一部に硬いしこりとして触れることがあります。進行すると周囲の組織にくっつき、つばを飲み込んでも動きにくくなる場合があります。

声がかすれる、首のリンパ節が腫れる、しこりが急に大きくなるといった変化も、悪性の病気を疑う手がかりです。長年大きさが変わらなかった甲状腺が、数週間から数ヶ月で急に大きくなり、息苦しさや飲み込みにくさを伴う場合は、甲状腺悪性リンパ腫や未分化がんも考えます。見た目や触った感覚だけで判断するのは難しいため、甲状腺超音波検査で腫れ方やしこりの性質を確認し、必要に応じて穿刺吸引細胞診を行います。

配信元: Medical DOC

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