不妊治療を始めたものの、なかなか結果が出ず悩む人は少なくありません。成功率に最も大きく影響するのは年齢で、体外受精(IVF)の妊娠率は30代前半で約45〜50%、40歳を超えると10〜30%程度とされています。治療はタイミング法や人工授精から始め、年齢や検査結果に応じて体外受精・顕微授精(ICSI)へ段階的に進むのが一般的ですが、保険適用には年齢による回数制限もあります。成功率を高めるうえでは、睡眠や食事などの生活習慣を整え、葉酸などのサプリメントを取り入れるのも一つの方法です。村尾産婦人科クリニックの深川真弓先生に、年齢・治療法による違いと成功率を高めるポイントを聞きました。
※2025年11月取材。

監修医師:
深川 真弓(村尾産婦人科クリニック)
埼玉医科大学医学部を卒業後、久留米大学病院で研修を開始。久留米大学医学部産科婦人科学教室、国立病院機構小倉医療センター、蔵本ウィメンズクリニック、つばきウィメンズクリニックなどで生殖医療に携わり、2025年5月より村尾産婦人科クリニック勤務。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。
不妊治療とは
編集部
不妊治療について教えてください。
深川先生
不妊治療は、医学的に妊娠の成立をサポートする治療です。妊娠を希望しても自然妊娠が難しい夫婦に対して行います。タイミング法や排卵誘発、人工授精、体外受精などさまざまな方法があります。どの方法が適しているかは、年齢や卵巣・精子の状態、ホルモンバランスや夫婦の希望を確認しながら個別に判断します。
編集部
どのくらい妊娠しないと「不妊」と判断されるのですか?
深川先生
一般的には、1年間避妊せずに妊娠に至らない場合を「不妊」といいます。ただし、35歳を超えると卵子の質が低下するため、1年を待たずに3〜6カ月程度で一度検査を受けるようおすすめします。女性の加齢だけでなく、男性における精子の質も年齢とともに変化するため、カップルでの早めの受診が重要です。
編集部
男性側が原因である場合もあるのですか?
深川先生
はい、男性側の要因も女性側の要因とほぼ同数存在するといわれています。女性では排卵障害や卵管の通過障害、男性では精子の数や運動率の低下が多く見られます。また、原因不明のケースも10〜25%程度あります(日本産婦人科医会「5.不妊の原因と検査」)。いずれにしても、複数の検査を行うことで、最適な治療方針を立てやすくなります。
編集部
受診のタイミングに迷う人も多いかと思います。
深川先生
「もう少し待ってみよう」と思ううちに、時間だけが過ぎてしまうケースは少なくありません。自身の年齢や健康状態を踏まえて、早めに専門医へ相談してください。検査を受けて現状を知るステップが、最初の一歩になります。
治療法と選択のポイント
編集部
治療法にはどのようなものがありますか?
深川先生
タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などがあります。まずは、排卵や卵管の通過、精子の状態を検査し、自然妊娠の可能性を確認します。そのうえで、段階的に治療を進めます。基本的には、最初は自然妊娠に近い方法から始め、状況に応じてステップアップします。しかし、年齢やホルモンの状態によっては、早期に体外受精へ移行するケースもあります。
編集部
タイミング法や人工授精は、どのような治療ですか?
深川先生
タイミング法は、排卵日を予測して性交のタイミングを合わせる方法です。排卵がうまく起こらない人には、排卵誘発剤を併用する場合もあります。人工授精(AIH)は、排卵のタイミングに合わせて夫の精子を子宮内に注入し、自然に近い受精を促します。いずれも体への負担が少なく、初期段階で選ばれる治療です。
編集部
体外受精と顕微授精の違いを教えてください。
深川先生
体外受精は、採取した卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮に戻す方法です。顕微授精は、精子の数が少ない、または運動率が低い場合に、顕微鏡下で一つの精子を卵子へ直接注入します。つまり、体外受精は「自然に近い受精」、顕微授精は「人工的に精子を入れる」方法であり、精子や卵子の状態によって適応を判断します。
編集部
それぞれの治療法は、どのように選ぶのがよいでしょうか?
深川先生
年齢や検査結果、治療歴を踏まえて総合的に判断します。若い人や原因がはっきりしない場合は、タイミング法や人工授精から始めるのが一般的です。一方で、40歳前後では時間との闘いになるため、早めに体外受精を検討する場合もあります。医師と相談しながら「どこまでの治療を希望するか」や、費用・期間をある程度明確にしておいてください。
編集部
年齢も関係するのですね。
深川先生
そのとおりです。費用面でも年齢は重要な指標です。体外受精の保険適用は、治療開始時に43歳未満の女性が対象で、回数は胚移植の回数で数えます。治療を始めた年齢が40歳未満なら子ども1人につき最大6回、40歳以上43歳未満なら最大3回までが上限です。ほんの少しのタイミングの違いで保険が使えなかったり、適用回数が減ったりしないよう、こうした制度も踏まえながら治療のステップを検討することが大切です。

