不妊治療の成功率
編集部
不妊治療の成功率を左右する要因にはどんなものがありますか?
深川先生
最も大きく影響するのは年齢です。女性は35歳を過ぎると卵子の質が低下し、妊娠率が下がります。また、ホルモンバランスや生活習慣、ストレスも影響します。睡眠不足や極端なダイエット、喫煙、飲酒はホルモンの分泌を乱し、受精や着床を妨げる場合があります。
編集部
年齢による違いは具体的にどの程度あるのでしょうか?
深川先生
体外受精の妊娠率は30代前半で約45〜50%、35歳を超えると30〜40%、40歳を超えると10〜30%程度といわれています(日本産科婦人科学会「ARTデータブック」2022年版)。そのため、年齢の影響はかなり大きいと考えてよいでしょう。年齢が上がるほど時間との勝負になるため、早めの相談が何よりも大切です。とはいえ、35歳を過ぎてから治療を始めて妊娠する人も多くいます。これらはあくまで統計的な数字です。年齢にとらわれすぎず、前向きな気持ちで治療に取り組んでください。
編集部
年齢のほかに、不妊治療の成功率を高めるためのポイントはありますか?
深川先生
まずは生活習慣を整える点です。しっかりと睡眠時間を確保し、3食をバランスよく取るのが基本です。卵子の質は生活習慣の影響を受けるといわれており、日々の積み重ねが結果につながります。また、妊娠を考え始めた時点から葉酸のサプリメント摂取をおすすめします。葉酸は胎児の神経系の発達を助ける栄養素です。
編集部
栄養も重要なのですね。
深川先生
さらに、日本人はビタミンDが不足しやすく、欠乏すると妊娠率が低下する可能性も指摘されています。加えて、乳酸菌は子宮や腟内の細菌叢(さいきんそう)のバランスを整えます。善玉菌である乳酸菌が多い環境では着床率が高まるといわれています。そのため、これらのサプリメントは妊活の初期から取り入れることを検討してもよいでしょう。
編集部
不妊治療は精神的な負担も大きいと聞きます。
深川先生
そうですね。治療を続けるうちに「なぜ自分だけが」と感じる人も多くいます。そのため、心身のバランスを保つためのサポートやケアが重要です。さまざまな研究でも、心の安定がホルモン分泌へよい影響を与えると知られています。医師や看護師によるサポートはもちろん、夫婦の支え合いも欠かせません。お互いの思いを共有し、パートナーシップを育む時間を日常の中で意識的に持つと、治療を前向きに続ける大きな力になります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
深川先生
「産婦人科に行く」というだけでもハードルが高いと感じる人が多く、恥ずかしさやためらいから足が向かないという声も少なくありません。さらに不妊治療となると周囲に話せず、こっそり通院している人も多いのが現状です。しかし、実際には不妊治療を経て妊娠・出産する人は年々増えています。どうか引け目を感じず、もっと自然に受け止めてください。「まだ不妊治療までは考えていない」という人も、「今、自分が妊娠できる状態なのか」を知るために、まずは検査だけでも受診をおすすめします。
不妊治療は決して恥ずべきものではありません。産婦人科は、どんな悩みでも相談しやすい場であるよう努めています。
編集部まとめ
不妊治療は生活習慣や治療法、そして年齢によって大きく結果が異なります。「なんとなく恥ずかしい」「待っていれば授かるだろう」と先延ばしせず、早めの受診が重要です。これまで「自分たちにはまだ早い」と思っていた人も、まずは一度、専門医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

