●文科省も「授業担当者は直接雇用」が前提
こうした状況を受け、文部科学省は2021年4月、全国の大学に事務連絡を出した。
通知では、請負契約などの個人事業主について、「学校教育法上、授業担当教員として発令することはできない」との考え方を示した。
つまり、授業を担当する教員は、大学と雇用関係にあることが前提という考え方を示したものだ。
大阪大も、この通知を受けて2022年4月から非常勤講師との契約を雇用契約へ変更した。
しかし、それ以前から勤務していた非常勤講師については、契約を切り替えるのではなく、2023年3月末で雇い止めとしている。
大阪高裁はこうした経緯も踏まえ、契約の名称だけではなく、授業の進め方や成績評価など、実際の働き方を重視して4人の労働者性を認めた。

7月16日に大阪市内で開かれた集会には、原告や弁護団のほか、多くの支援者が参加した。弁護団は大阪高裁判決のポイントや、最高裁での今後の手続きについて説明した。
同様の争点は東京海洋大でも争われている。
17年間勤務した非常勤講師の男性が無期雇用への転換を申し込んだものの認められず、雇い止めされた裁判だ。
一審の東京地裁は、労働者性を否定して請求を棄却したが、東京高裁は今年1月、一審判決を取り消し、男性の労働者性を認めて復職とバックペイの支払いを命じた。
東京海洋大側はこの判決について上告しており、現在は最高裁の判断を待っている。
この日の集会には、東京海洋大訴訟の原告や弁護団もオンラインで参加し、今後も国会への働きかけなどを続けていくことを確認した。
集会の最後には、原告らがそれぞれ支援者への感謝と決意を語った。
大阪大訴訟の原告の一人、浦木貴和さん(62)は、こう呼びかけた。
「私たちの闘いが負けてしまうと、全国の非常勤講師や大学で働く人たちの労働者性が否定されてしまいかねません。そういうことが起きないように頑張って闘っていきます」

●「私より若い3人には大学へ戻ってほしい」
原告4人の中で最年長の新屋敷さんは現在65歳。大阪大の定年年齢に達しているため、最高裁で勝訴が確定しても、自身は復職できない可能性が高い。
それでも、新屋敷さんが口にしたのは、自分ではなく仲間のことだった。
「私は現場復帰にはそんなにこだわっていません。でも、他の3人は私より若いので、勝訴して大学へ戻ってもらいたいですね」
そして、最後まで拭えなかったのは、大阪大への率直な疑問だった。
「頑なに非常勤講師を解雇して、大学に何のメリットがあるのでしょうか。別の人を見つけて採用するにも負担がかかりますし、どう考えても非常勤講師を無期転換したほうが人件費も安く済むはずです。
ノーベル賞受賞者を輩出しているような大学にもかかわらず、なぜこんなことをやり続けているのか疑問です」

大阪大と東京海洋大の裁判はいずれも最高裁へ持ち込まれた。
最高裁が示す判断は、契約の名称よりも働き方の実態をどう評価するのかという問題に、一つの方向性を示すことになりそうだ。

