大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)は、大腸がんやポリープなどの病気を早期に見つけるために行われる検査です。しかし、「痛そう」「苦しそう」といったイメージから、検査をためらってしまう人も少なくありません。一方で、近年は内視鏡機器や検査技術が進歩し、以前と比べて検査の負担を軽減する取り組みも行われています。今回は、大腸カメラの特徴や分かること、その重要性について、とよだ内科・内視鏡クリニック院長の豊田先生に聞きました。
※2026年6月取材。

監修医師:
豊田 昌徳(とよだ内科・内視鏡クリニック)
2007年に神戸大学大学院医学研究科を修了。昭和大学横浜市北部病院(現・昭和医科大学横浜市北部病院) 消化器センター、神戸大学大学院医学研究科 光学診療部/消化器内科、国立がん研究センター東病院 消化管内科、神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科に勤務。春日野会病院 内科・消化器内科(院長)を経て、2025年にとよだ内科・内視鏡クリニックを開院。日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本内科学会 認定内科医。
大腸カメラはどんな検査? 何が分かる?
編集部
大腸カメラとは、どのような検査なのでしょうか?
豊田先生
大腸カメラは、肛門から細い内視鏡を挿入し、大腸の粘膜を直接観察する検査です。CTやX線(レントゲン)では分かりにくい小さな病変や、粘膜のわずかな変化まで確認できるため、大腸がんやポリープを発見する上で精度の高い検査の一つです。近年の内視鏡機器は非常に高性能になっており、数mm程度の小さなポリープや早期のがんも発見できるようになっています。
大腸がんは早期であれば、ほとんど症状がありません。そのため、「症状が出てから受ける検査」というよりも、「症状が出る前に病気を見つけるための検査」と考えてもらうと分かりやすいと思います。
編集部
大腸カメラでは、どのような病気が見つかるのでしょうか?
豊田先生
代表的なのは、大腸がんと大腸ポリープです。特に大腸ポリープの中には、将来的に大腸がんへ進行するものがあり、検査で発見して切除することで、大腸がんの予防につながる可能性があります。
そのほかにも、潰瘍性大腸炎やクローン病、虚血性腸炎、大腸憩室(けいしつ)出血、感染性腸炎などの診断にも役立ちます。また、血便や貧血の原因を調べたり、腹痛や便通異常の原因を探したりする際にも欠かせない、とても重要な検査です。
編集部
検査には、どのくらい時間がかかるのでしょうか?
豊田先生
15〜30分程度で終了することがほとんどです。ポリープ切除を行う場合には多少時間が延びることがありますが、それでも日帰りで対応できるケースが大半です。患者さんが大変だと感じるのは、検査そのものよりも事前の腸管洗浄(下剤の服用)かもしれません。近年は飲みやすい下剤も増えており、院内でスタッフのサポートを受けながら服用できる施設もあります。
編集部
検査中にポリープが見つかった場合は、どうなるのでしょうか?
豊田先生
ポリープの大きさや形状にもよりますが、多くの場合は検査中にその場で切除できます。患者さんからすると、「検査と治療を同時に行える」点が大腸カメラの大きなメリットです。切除したポリープはその後、病理検査でどのような性質かを詳しく調べます。
編集部
ポリープは、切除しなければならないのでしょうか?
豊田先生
すべてのポリープが切除の対象になるわけではありませんが、大腸ポリープの多くは「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれるタイプで、時間をかけて大腸がんへ進行する可能性があります。大腸がんの多くは、「正常粘膜 → 腺腫性ポリープ → がん」という過程を経て発生すると考えられています。そのため、ポリープの段階で切除することは、がんを早期発見するだけでなく、がんそのものを予防することにつながります。
個人的に大腸カメラの最大の価値は「がんを見つけること」だけではなく、「がんになる前に防ぐこと」だと考えています。
どんなときに検査を受ける? 早期発見が大切な理由
編集部
どのような症状があると、大腸カメラを検討することが多いのでしょうか?
豊田先生
血便や下血、便秘や下痢が続く、便が細くなるといった便通の変化、腹痛や腹部の張りなどがある場合には、検査を検討します。特に、40歳をすぎて新たに症状が出てきた場合には、一度大腸の状態を確認しておくことをおすすめします。
編集部
症状がなくても、検査を受けることはあるのでしょうか?
豊田先生
むしろ、症状がない人にこそ受けてもらいたい検査です。早期の大腸がんやポリープは自覚症状が乏しく、症状が出てから見つかるケースでは、すでに進行していることも少なくありません。便潜血検査で陽性になった人はもちろん、家族に大腸がんの人がいる場合には、一度は大腸カメラを検討してほしいですね。症状がない段階で病変を見つけることは、治療の負担を減らすという意味でも非常に重要です。
編集部
「治療の負担を減らす」とは、具体的にどのようなことでしょうか?
豊田先生
大腸がんは、進行度によって治療方法が大きく変わります。早期の段階で発見できれば、内視鏡治療のみで完結する場合があります。一方で、がんが進行すると、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術や開腹手術、抗がん剤治療、人工肛門などが必要になることもあります。患者さんの身体的負担だけでなく、家族の負担や仕事への影響も大きくなります。だからこそ、症状が出る前の段階で発見することが大切なのです。

