「健康のために運動したほうがいい」と分かっていても、「どのくらい運動すれば効果があるの?」と疑問に思う人は少なくありません。
米国・ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院の研究グループは、約14万7000人を最長30年間追跡した結果、中程度の筋力トレーニングを継続し、有酸素運動と組み合わせることで死亡リスクの低下が期待できる可能性を報告しました。この内容について金井先生に伺いました。

監修医師:
金井 研三(医師)
横浜市立大学卒業。2025年、西横浜国際総合病院勤務。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院栄養学部の研究員らが発表した内容を教えてください。
金井先生
ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院栄養学部の研究グループは、米国で行われた3つの大規模な追跡調査のデータをもとに、筋力トレーニングと死亡リスクの関係を調べました。約14万7000人を最長30年間追跡した結果、週90〜119分の筋力トレーニングを行っている人は、まったく行っていない人と比べて、すべての原因による死亡リスクが13%、心血管疾患による死亡リスクが19%、神経疾患による死亡リスクが27%低いことが示されました。一方で、週120分を超えて筋力トレーニングを行っても、それ以上の大きな効果は確認されませんでした。また、がんによる死亡リスクについては、週1〜59分程度の比較的少ない筋力トレーニングで低下が見られました。さらに、有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)と筋力トレーニングを組み合わせて行っている人は、どちらか一方だけの場合よりも死亡リスクが低い傾向が確認されました。研究グループは、中程度の筋力トレーニングを継続し、有酸素運動と組み合わせることが、健康維持や寿命の延伸につながる可能性があると結論づけています。運動量の目安とは?
編集部
研究では筋力トレーニングの時間と健康との関連が示されました。日常生活では、どのくらいの運動量を目安にすればよいのでしょうか。厚生労働省の推奨も踏まえて教えてください。
金井先生
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、科学的根拠に基づいた身体活動・運動量の目安が示されています。成人は、歩行などの3メッツ(普通歩行程度の運動強度)以上の身体活動を1日60分以上行うこと、また息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことが推奨されています。さらに、筋力トレーニングは週2〜3日取り入れることが勧められています。身体活動量が増えるほど生活習慣病や死亡のリスクは低下する傾向があり、今より1日10分多く体を動かすだけでも健康への効果が期待できます。長時間座り続けることは健康リスクを高めるため、こまめに体を動かすことも大切です。無理のない範囲で日常生活の中に運動を取り入れ、今より少しでも多く体を動かす習慣を心がけましょう。
