『糖尿病性腎症』5つのステージでの症状と治療は? 透析を防ぐために必要なことを医師が解説

『糖尿病性腎症』5つのステージでの症状と治療は? 透析を防ぐために必要なことを医師が解説

糖尿病性腎症は、糖尿病の影響で腎臓の働きが徐々に低下する合併症です。初期には自覚症状が乏しく、進行すると透析が必要になることもあります。ステージごとの症状や検査、治療方法について、西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニック院長の東谷先生に聞きました。

※2026年7月取材。

東谷 紀和子

監修医師:
東谷 紀和子(西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニック)

2004年に東京女子医科大学医学部を卒業。東京医療センター、横浜新緑総合病院、渋谷済生クリニックなどで糖尿病代謝外来の非常勤を経て、西小山とうや内科・糖尿病循環器クリニックを開院し、院長を務める。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

糖尿病性腎症とは?

糖尿病性腎症とは?

編集部

糖尿病性腎症とは、どのような病気ですか?

東谷先生

糖尿病性腎症とは、糖尿病による高血糖状態が長く続くことで腎臓の細い血管が傷つき、腎臓の働きが少しずつ低下していく病気です。腎臓には、血液をろ過して老廃物を尿として排出する役割があります。しかし、腎臓のフィルターに当たる部分が障害されると、尿にタンパクが漏れたり、老廃物を十分に排出できなくなったりします。糖尿病性腎症は糖尿病の三大合併症の一つであり、進行すると透析が必要になることもあります。

編集部

なぜ糖尿病になると腎臓が悪くなるのでしょうか?

東谷先生

血糖値が高い状態が続くと、血管の内側が傷つきやすくなります。腎臓の糸球体(しきゅうたい/血液をろ過する部分)は、いわば「血管でできた蹴鞠(けまり)」のような構造です。非常に細い血管が集まっているため、高血糖の影響を受けやすいのです。腎機能は一度大きく低下すると回復が難しいため、早い段階で気付くことが大切です。

編集部

糖尿病性腎症は、症状で気付くことができますか?

東谷先生

初期の糖尿病性腎症は、ほとんど自覚症状がありません。痛みや違和感がないまま進行するため、検査を受けなければ気付きにくいのが実情です。進行すると、足のむくみ、疲れやすさ、息切れ、食欲低下、尿の泡立ちなどが表れることがありますが、これらの症状が出たときには、すでに腎機能がかなり低下している場合も少なくありません。症状の有無だけで判断せず、尿検査や血液検査で定期的に確認することが重要です。

編集部

糖尿病性腎症の検査では、何を調べるのでしょうか?

東谷先生

主に尿検査と血液検査を行います。尿検査では、尿にタンパクや血液が混ざっていないか、アルブミンが含まれていないかを確認します。アルブミンはタンパク質の一種であり、糸球体の障害が進むと尿の中に漏れ出てくるようになります。また、血液検査では血糖値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー/過去1〜2カ月の血糖値の平均的な状態を反映する数値)、クレアチニン値(筋肉の活動によって作られる老廃物で、腎機能の低下を示す数値)などからeGFR(推算糸球体ろ過量/腎臓が老廃物を排泄する能力を示す数値)という腎機能の指標を計算します。これらの指標を総合的に検討し、糖尿病性腎症かどうか診断します。

編集部

いろいろな数値を調べる必要があるのですね。

東谷先生

はい。ただし、高血圧や、ほかの腎臓病が原因となっていることもあるため、タンパク尿や腎機能の低下が見られても、すぐに糖尿病性腎症と決まるわけではありません。糖尿病を発症してからの期間や、血糖値・血圧の経過などを確認しながら総合的に判断します。高血圧による腎障害が比較的緩やかに進むことがある一方、糖尿病性腎症で尿タンパクが多い人では、受診のたびに腎機能の低下が見られるほど速く進行する場合もあります。また、眼科の検査で糖尿病網膜症(糖尿病により眼の網膜に障害が起きる合併症)が見つかった場合には、「糖尿病により、腎臓の障害が起きている可能性が高い」と考える手がかりになります。

ステージごとの症状と治療方法は?

ステージごとの症状と治療方法は?

編集部

糖尿病性腎症のステージは、どのように分けられるのでしょうか?

東谷先生

糖尿病性腎症は、尿中アルブミンの量とeGFRを基に、主に5つのステージに分けて考えます。初期ほど自覚症状は乏しく、検査でしか分からないことも少なくありません。病期が進むほど、むくみや倦怠(けんたい)感などが表れ、透析などの治療を検討する段階に近づいていきます。

編集部

第1期や第2期では、どのような治療を行いますか?

東谷先生

第1期は、尿中アルブミンが正常範囲で、腎機能も比較的保たれている段階です。症状はほとんどありませんが、血糖、血圧、脂質を良好に管理し、腎症を発症させないことが目標です。
第2期は、微量アルブミン尿が見られ、腎臓に負担がかかり始めている段階です。この時期には血糖に加えて、血圧・体重・コレステロールの管理と減塩、禁煙を徹底します。必要に応じて、ACE阻害薬やARB(いずれも血圧を下げる薬)、SGLT2阻害薬(尿から糖を排出して血糖値を下げる薬)、フィネレノン(腎臓や心臓を保護する作用が期待される薬)など、腎臓を守る作用が期待できる薬を使うこともあります。

編集部

第3期になると、症状や治療はどう変わるのでしょうか?

東谷先生

第3期は、尿中アルブミンや尿タンパクの量が明らかに増えてくる段階です。むくみや血圧の上昇が見られることもありますが、まだ自覚症状がほとんどない人もいます。治療では、血糖値を良好に保つことに加え、血圧をしっかり管理し、尿タンパクを減らすことが重要です。また、食事管理として、減塩やタンパク質量の調整を検討します。さらに、第2期と同様に薬物療法を行い、腎機能の低下をなるべく遅らせます。

編集部

第4期・第5期では、どのような治療が必要になりますか?

東谷先生

第4期は、eGFRが大きく低下し、腎臓の働きがかなり弱くなった段階です。むくみ、貧血、倦怠感、息切れ、食欲低下などが出ることがあります。薬の量を腎機能に合わせて調整し、血圧管理、利尿薬の使用、貧血治療、食事療法などを行います。
第5期では、腎機能が著しく低下し、自力で老廃物を排出することが難しくなります。そのため、透析や腎移植などの腎代替療法が必要になります。

編集部

第5期になると、どのような症状が出るのでしょうか?

東谷先生

倦怠感、むくみ、吐き気などの症状が出やすくなります。また、余分な水分を排出できず体に水分がたまることで心臓に負担がかかり、心不全を起こしたり、肺に水がたまったりすることがあります。狭心症など、そのほかの循環器系疾患のリスクも高まるため、心エコー(超音波で心臓の動きを調べる検査)などにより心機能を評価することが必要になります。

配信元: Medical DOC

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