夏休みを迎え、車でのお出かけが増えるシーズン。子どもを車に乗せる前にしっかり確認しておきたいのが、チャイルドシートの正しい使い方です。安全を第一に考えた車づくりで知られるスウェーデン発の自動車メーカー・ボルボは、1959年に世界で初めて3点式シートベルトを実用化し、その特許を無償公開。1970年から実際の事故データ収集と事故調査を続け、そのデータをもとに、命を守るだけでなく事故そのものを防ぐ安全技術を生み出してきました。
チャイルドシートは「4歳までは後ろ向き」が安全

ボルボが開催した「子どもの車内安全」についてのセミナー。登壇したのは、スウェーデンにあるボルボの自動車安全研究・衝突試験施設「ボルボ・カーズ・セーフティセンター」で、37年にわたり安全開発に携わってきたロッタ・ヤコブソン博士です。
「ボルボは1972年にチャイルドシートを導入した当時から、進行方向に対しチャイルドシートを『後ろ向き』に装着することを一貫して推奨しています。それは、乳幼児は体重に対して頭の重さの比率が高く、また首を支える力も弱いため、衝撃の際の荷重を背中全体に分散させる必要があるからです。
乳幼児が前向きに座った状態で衝突による衝撃を受けると、椎骨(脊椎の骨)がずれてしまい、ときに重傷を負い、重い障害が残ることもあるのです。後ろ向きシートであれば、衝突時のエネルギーを背中全体で受け止められ、首への負担を大幅に軽減できます」(ヤコブソン博士)

日本では道路交通法により、6歳未満の幼児には原則としてチャイルドシートの使用が義務付けられています。国際的なチャイルドシート安全基準の一つであるUN R129では、少なくとも生後15カ月ごろ(身長76cm未満)までは後ろ向きで使用する考え方が採用されています。日本でもUN R129に基づいて生後15カ月ごろまでは後ろ向きでチャイルドシートを使用し、その後は前向きでの使用が一般的。しかし、スウェーデンでは4歳まではチャイルドシートの後ろ向き使用が推奨されているそうです。
セミナーで紹介された正面衝突事故実験の映像では、前向きのチャイルドシートに座った子どもの人形の首が、衝突時に大きく前方向に倒れ込んでしまう様子が映されました。前向きに座ることで衝突時に子どもの首に大きな負荷がかかるのです。
日本ではまだ一般的ではない、4歳までのチャイルドシートの後ろ向き使用。日本でも4歳までの後ろ向き使用に対応するチャイルドシートが販売されていますが、一部にとどまっています。

ロッタ・ヤコブソン博士
ヤコブソン博士は「(4歳までのチャイルドシートの後ろ向き使用は)世界的にはまだ浸透していません。チャイルドシートの使用について正しい知識と情報を届けたいです」と強調しました。
また、ヤコブソン博士が推奨しないタイプのチャイルドシートもあるそうです。子どもを前向きに座らせておなかの前に置くクッションバーで上半身を支えるタイプ(インパクトシールド)のチャイルドシートは「衝突時に首に大きな荷重が加わるため推奨しない」とのこと。
シートベルトを正しく装着するためのブースタークッション

子どもの成長にともない、チャイルドシートからジュニアシートへ移行する必要があります。日本では6歳以上のチャイルドシート使用について法的な義務はありません。しかし、大人用のシートベルトを正しい位置で使用できるまで(目安は身長150cm)は、6歳以上であってもジュニアシートの使用が推奨されています。
ボルボでは、ブースタークッションと呼ばれるタイプのジュニアシートの使用を推奨。ブースタークッションは、身長の低い子ども用に座面を高くし、大人用のシートベルトを正しく装着できるようにするための補助アイテムです。

「子どもは単に体が小さいだけではなく、骨格そのものが大人と異なるため、シートベルトを適切な位置へ導く必要があります。重要なのは、子どもの腰の位置を底上げして、シートベルトによって正しく保護される位置に合わせることです。
ブースタークッションを使用する際は、腰ベルトが骨盤の上・太もも側にかかっていること、 肩ベルトが胸と肩にかかっていることを確認しましょう」(ヤコブソン博士)
ブースタークッションによって座面が底上げされることで、子どもの体の中でも比較的強度の高い骨盤に沿ってシートベルトを装着できるとともに、肩ベルトが適切な肩の位置にかかるようにもなります。このように正しく装着すると、万が一の事故のときに、衝撃による負荷がシートベルトに分散され、腹部を傷めるリスクも低減できます。

