不倫が夫に発覚し、その証拠となる内容が書かれた日記を渡したところ、同意なくコピーを取られてしまい、処分してもらえない——。
弁護士ドットコムに、不倫をしてしまった女性からの悩みが寄せられている。
相談によれば、不倫がバレてから、不倫相手が夫に慰謝料を支払うなどして、ひとまずの決着はつけられた。なんとか婚姻関係を続けているが、気がかりは、夫が証拠となる日記のコピーを保管したままであること。
自分の私的な思いをつづった日記。夫に見せたのは他ならぬ相談者自身だが、コピーをとることには同意していなかった。それを相談者が勝手に処分することは問題なのだろうか。また、処分を求めるにしても法的な根拠はあるのか。林朋寛弁護士に聞いた。
●理屈としては法的問題になるが…
──夫が持つ日記のコピーを妻が勝手に処分したら、民事上、何か問題が生じるのでしょうか。
日記のコピーをした用紙は夫の所有物と考えられます。日記のコピーを処分するのは、他人の物を勝手に廃棄したとして、不法行為の損害賠償の問題にはなり得ます。
しかし、無名の一般人の日記のコピーの紙には通常は財産的価値はほとんどありません。それに、不倫相手が慰謝料を支払ったということですから、コピーを証拠として保存する価値もないはずです。
また、日記のコピーの処分によって不法行為の損害といえるほどの夫の精神的苦痛が生じるとも思えません。
さらに、日記のコピーが第三者の目に触れると妻のプライバシーなどが侵害される危険があるという事情もあります。
となると、コピーの処分に限っていえば不法行為が成立するかは微妙ですし、理屈の上では不法行為が成立し得たとしても、現実に法的紛争に発展する可能性は低いと考えられます。
●処分を直接頼んだらどうなる?
──それでは、勝手に進めるのではなく、妻が夫に直談判して、コピーの処分を求めるのはどうでしょうか。
コピーした用紙の他に夫がPDFや画像で保存するなどしている可能性も十分にあります。ですから、日記のコピーの廃棄や引渡しを実現できたとしても結果的に意味はないかもしれません。
夫に対して日記のコピーの廃棄や引渡しを請求することだけを検討する意味はあまりなさそうですが、理屈としては次のように考えられます。
まず、日記の原本の所有権に基づいてコピーの引渡しを求めることはできません。
原本の所有権は、日記をコピーした他者所有の紙には及ばないからです。
一応、夫が日記をコピーした用紙が妻の所有物だという場合であれば、用紙の所有権に基づく返還請求権を主張するという構成が考えられます。
また、妻のプライバシーや名誉といった人格権の保護のための差止請求としてコピーの廃棄や引渡しを請求するということが考えられます。
しかし、公開されると日記の内容から相談者の法的権利を侵害することになるといえる場合でも、「第三者に公開するな」という請求まではできても、その公開禁止だけで足りるので、コピーの廃棄や引渡しまでは請求できないとも考えられます。
他には、日記は相談者が著者の著作物として、著作者人格権や著作権に基づいてコピーの廃棄等を請求する法律構成が可能と考えます。
実際の対応としては、過失であっても日記のコピーが第三者に見られるようなことがあった場合は相談者のプライバシー等を侵害する不法行為として夫が相談者に慰謝料を支払わねばならなくなることを警告して、夫に自主的にコピーを引き渡すよう説得するということになりそうです。

