●将来の離婚訴訟にどうしても必要とも思えない
──夫側が「将来の訴訟に備えた証拠だ」と主張して処分を拒否した場合、妻と夫、どちらの利益が優先されますか
本件では、夫としては不倫相手から慰謝料の支払いを受けていて不倫相手との示談書もあるでしょうから、相談者の不倫の事実の証拠として日記のコピーがどうしても必要というものではなさそうです。
ですから、日記が暴露されて侵害される相談者のプライバシーよりも夫が証拠として日記のコピーを保持する利益は低いように考えられます。
夫が相談者との将来の訴訟(離婚訴訟など)を考えているのであれば、将来の離婚に備えた合意をまとめることで日記のコピーの引渡しに応じてもらうというのが現実的な対応でしょう。
●夫にコピーを捨てさせて状況が解決するのか
ここまで法的な問題について述べてきましたが、そもそも、不倫相手から慰謝料の支払いを受けた夫がいまだに日記のコピーを持っている真の意図はよくわかりません。
理屈としては法的問題が生じる可能性は低いという結論に至りそうです。しかし、法的紛争にならなそうだからといって、コピーの処分にこだわれば、夫との対立を深めることになるでしょう。
妻と夫は婚姻関係を続けているのに、夫がそのようなコピーを所持し続けているのは、妻と夫との関係の解決には至っていないように考えられます。日記のコピーの所持は問題の本質ではないように見えます。
夫の考えを確認した上で、相談者自身はそのような夫との関係を改善していきたいのか、解消したいのかが根本的な問題ではないかと考えます。
関係改善に向けた話し合いの過程で、あるいは離婚に向けた交渉の中で、日記のコピーの引渡しについて求めていくべきでしょう。
【取材協力弁護士】
林 朋寛(はやし・ともひろ)弁護士
北海道江別市出身。札幌南高、大阪大学卒。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。平成17年10月弁護士登録(東京弁護士会)。沖縄弁護士会を経て、平成28年から札幌弁護士会所属。
事務所名:ハヤシトモヒロ法律総合事務所
事務所URL:https://www.sapporobengoshi.com/

