「4年間、誰にも言えなかった」
転機は、B美が産休に入る直前。
ふたりきりになった帰り際、B美がぽつりと話し始めます。
「実は不妊治療を4年間続けてたんだ。職場には言えなくて、突然のお休みは難しいことも多かったけど、言ってしまったら逆に休めなくなる気がして……」
A子は言葉を失いました。
早退していたあの日も、重い荷物を誰かに頼んでいたあの日も、全部そうだったのかもしれない。
「妊娠がわかっても、また流れてしまうんじゃないかって怖くて。だから報告もすぐにはできなくて……」
あの朝の沈黙が、A子の頭によみがえりました。
おめでとうよりも先にシフト表を思い浮かべた、あの瞬間が。
翌日、A子はみんなにB美の話を伝えました。
その場にいた全員が、しばらく黙ったままでした。
B美が戻ってくる日に向けて、今度こそ心から迎えようと、全員で話し合いました。
体験者の声
あの朝に戻れるなら──A子は今もそう思っているそうです。
【体験者:30代・女性・保育士、回答時期:2026年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。

