「薬が6種類以上」の高齢者は副作用が増える? 在宅医療だからできる『薬の断捨離』を医師が解説

「薬が6種類以上」の高齢者は副作用が増える? 在宅医療だからできる『薬の断捨離』を医師が解説

高齢になると複数の診療科から薬が処方され、10種類以上を服用することも珍しくありません。薬が多いことで副作用や飲み合わせ、服薬ミスなどの問題が起こる状態を「ポリファーマシー」といい、一般に6種類以上で高齢者は副作用が増えるとされます(厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」)。かといって自己判断で中止するのは危険です。そこで役立つのが在宅医療。処方を一元的に管理でき、検査値だけでなく食事や眠気、便通といった暮らしの様子を見ながら、本当に必要な薬を慎重に見直せます。ただし目的は薬の数を減らすこと自体ではありません。この「引き算の医療」について、医療法人社団貞栄会の内田貞輔先生に聞きました。

※2026年6月取材。

内田 貞輔

監修医師:
内田 貞輔(医療法人社団貞栄会)

2015年、32歳で静岡市に静岡ホームクリニックを開院。翌年、医療法人社団貞栄会を設立し理事長に就任後、東京・千葉・名古屋・横浜にもクリニックを開設。著書に、『家族のための在宅医療読本』など。医学博士。日本在宅医療連合学会評議員・在宅専門医・指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医、日本リウマチ学会リウマチ専門医・指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本緩和医療学会緩和医療認定医、日本抗加齢医学会専門医、難病指定医師、肢体不自由指定医師。

ポリファーマシーとは? どんなリスクがある?

ポリファーマシーとは? どんなリスクがある?

編集部

ポリファーマシーとは、どういう状態を指すのでしょうか?

内田先生

ポリファーマシーとは、服用する薬が多いことに関連して、副作用のリスク増加、服薬ミス、飲み続けにくさなどの問題につながる状態のことをいいます。一般に、薬が6種類以上になると、高齢者では有害事象が増えるとわかっています。そのため、トラブルの内容まで含めて薬を見直すことが大切と考えられています。

編集部

薬が多いと、どのようなリスクがありますか?

内田先生

代表的な問題には、不眠や食欲不振、めまい、ふらつきなどの副作用が挙げられます。そのほか、転倒、認知機能への悪影響、薬同士の相互作用も問題になります。

編集部

高齢者で特にリスクが大きいのはなぜですか?

内田先生

高齢になると、高血圧や糖尿病、腰痛、認知症、胃腸の不調など、複数の病気を抱える人が増えてきます。それぞれの専門科で必要な治療を受けるなかで薬が少しずつ追加され、結果として10種類以上を服用していることも珍しくありません。一つひとつの薬には処方された理由がありますが、複数の医療機関にかかっていると、ほかの診療科から何が処方されているのか、全体像を把握しにくくなることがあります。複数の専門科が丁寧に診療するほど、誰が薬全体を見渡すのかが課題になるのです。

編集部

以前は必要だった薬が、今の本人には負担になることもあるのでしょうか?

内田先生

あります。年齢を重ねると、体重や腎機能、食事量、活動量などが変化し、薬の効き方や体内から排出される速さも変わります。そのため、以前は問題なく服用できていた薬が、眠気や食欲低下、便秘、ふらつきなどの一因になることがあります。つまり、薬を飲むことが悪いのではなく、現在の体や生活に合っているかを定期的に確認することが大切なのです。

在宅医療だから「本当に必要な薬」を見直せる

在宅医療だから「本当に必要な薬」を見直せる

編集部

外来診療と比べて、在宅医療が「薬の断捨離」に有用な理由を教えてください。

内田先生

在宅医療が始まると、それまで複数の診療科に通っていた人でも、診療や処方が一つにまとめられることが多くなります。薬を一元的に管理できるようになるため、重複している薬や、現在は必要性が低くなった薬を見直しやすくなるのです。これが、在宅医療が「薬の断捨離」に役立つ大きな理由の一つです。

編集部

薬を一元管理できる、というのが大きなメリットなのですね。

内田先生

また、在宅医療では検査値だけで判断するのではなく、実際の暮らしを見ながら薬の影響を確認します。食事はどの程度とれているか、眠気が強すぎないか、便通はどうか、痛みで動けなくなっていないかなどを確認し、家族や介護職が感じている変化にも耳を傾けます。そのうえで薬の量を調整し、減らした後に困る症状が出た場合は、必要に応じて元に戻します。このように、生活の変化を見守りながら慎重に薬を減らせることが、在宅医療の大きな強みです。

編集部

なるほど、普段の暮らしぶりや病態を見ながら、薬の量を管理してもらえるのですね。

内田先生

それから、その人の生活状況に合わせて現実的な服薬プランを考えることができるのもメリットです。たとえば一人暮らしで認知症があり、ヘルパーが1日1回しか訪問できない場合、1日3回の服薬は現実的ではありません。その人の生活に合わせ、服用回数や薬の種類を調整できることも在宅医療の特徴です。

編集部

実際に薬を整理することで、体調が改善することもありますか?

内田先生

そのようなケースは少なくありません。ある高齢の患者さんは複数の診療科から10種類以上を処方されていましたが、腰痛が落ち着いていることを確認し、家族と相談しながら鎮痛薬を少しずつ整理したところ、食欲や活動性が改善しました。また、腎機能が低下していた人で、薬の必要性や用量を一つずつ見直した結果、体調が安定したケースもあります(※いずれもあくまで一例であり、効果には個人差があります)。大切なのは、必要な薬は残し、現在の本人に合わなくなった薬だけを慎重に整理することです。

編集部

在宅医療だからこそ「薬の断捨離ができる」という意味がよくわかりました。

内田先生

在宅医療の強みは、薬を減らした後も生活のなかで経過を見守れることです。薬を一つ減らして症状が悪化しないか、食欲や表情、活動性がどう変わるかをご本人や家族、訪問看護師、薬剤師などと確認します。このように、患者さんを見守りながら少しずつ調整できる「引き算の医療」は、在宅医療の大きな役割の一つです。

配信元: Medical DOC

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