腹膜癌の治療法や検査法にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な内容を医師が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「腹膜癌の余命」はご存知ですか?症状・治療法・検査法も解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
腹膜癌とは?
腹膜癌は、腹部を覆う腹膜や卵巣の表層組織から生じる悪性腫瘍を指します。現在では、卵巣の表層から発生する卵巣癌と酷似した性質から、腹膜癌は卵巣癌の類似疾患であるという見方もされています。また、治療方針も同様に、卵巣癌の治療アプローチに従うことが多いです。
近年では、卵巣癌・卵管癌・腹膜癌は臨床的および病理組織学的に似ていることから、治療方針に関するこれらの3つの分類の見直しが行われました。そのため、腹膜癌の診断を受ける患者数は近年増加傾向です。しかし、腹膜癌の単独治療に関するデータは未だに限られており、今後の基礎的研究は重要な位置づけとなっています。
腹膜癌の治療法は?
初期治療の段階で既に進行度が高いことが多い腹膜癌に対し、主に以下の治療を行います。
抗がん剤治療
進行癌で発見されることが大半である腹膜癌は、現在の医療において、抗がん剤投与のみで腹膜癌の治癒が得られることはほぼ不可能とされています。
腹膜癌の基本的な初回治療は、腫瘍の切除手術・抗がん剤投与治療の組み合わせです。まずは外科手術を行い、癌のステージ・病理組織学的診断を確立することから始めます。手術後は、癌細胞の抑制のため抗がん剤投与治療を開始します。
進行・腹膜播種・転移が伴うなど広範囲において重篤なリスクがある場合、手術前の抗がん剤投与も考慮されますが、これは稀なケースです。
腹腔内化学療法
腹腔内化学療法とは、抗がん剤をお腹の中に直接注入する治療法です。
腹膜癌は、腹腔内に癌組織が浸潤した進行期に治療を開始するケースが多い疾患です。高濃度の抗がん剤が腹腔内の広範囲に直接届く腹腔内化学療法は、治療効果の最大化が見込まれます。
副作用として、軽度の腹部膨満感が見られることがあります。
緩和治療
癌そのものから生じる痛みだけではなく、癌治療に伴う苦痛の緩和も重要です。従来、緩和治療やケアは、治療が不可能な段階で提供されることが一般的でした。しかし、現在は癌の診断および治療が開始される際に、さまざまな側面における緩和治療・ケアを同時に導入するべきという考え方が浸透しています。
また、癌の痛みを軽減するための医療麻薬としてモルヒネなどが存在しますが、「医療麻薬は末期の患者さんにしか使用されない」「医療麻薬は中毒性が高い」「精神的な影響がある」といった誤った認識を抱いている人も少なからずいるようです。
実際には適切に使用されると安全且つ効果的であり、痛みをコントロールし、治療を継続するために極めて重要な薬剤であることを理解すべきでしょう。
ステント留置術
癌の進行により、消化管を圧迫して閉塞することがあります。閉塞を起こすと、排便障害・腹痛・嘔吐・穿孔(腸に穴が開くこと)など、命に関わるような危険性が高まります。このような症例に対し、近年では従来の外科的バイパス手術・人工肛門形成手術に代わり、ステント留置術の適用も多くなりました。
ステントとは筒状の金網の形をしており、閉塞部を押し広げる器具のことです。ステントを体内に留置することで、管内の流れを回復させることが可能です。

