「電子レンジで加熱した食品を食べるとがんになる」「スマホを近くで充電したら赤ちゃんが脳腫瘍になる」など、SNS上で拡散される「エセ科学」に対して、科学的見地から反証。得体の知れない情報に振り回される人たちの不安を解消しています。大学、大学院で物理学を学び、一般企業での勤務を経て独立し物理学系クリエイターとなったあやかさんに、その歩みを聞きました。
数式をストーリーに見立てて
――あやかさんの経歴を教えてほしいです。あやか:北海道大学理学部物理学科を卒業後、北海道大学大学院理学院量子理学専攻(現・物性物理学専攻)を修了しました。就職した大手メーカーではスマホなどで使われるリチウムイオン電池の研究開発にたずさわりました。
その後、コロナ禍で育児や出産、仕事との両立が難しくなり、会社員を辞めフリーランスとしてSNS運用やライターなどの仕事と並行しながら「物理学系クリエイター」としての発信を続けています。
――幼い頃から、いわゆる“理系の学問”に関心があったんでしょうか?
あやか:いえ、実は文系の学部に行きたかったんです。でも、家の方針で理系に進みました。ただ、けっして理系の学問が嫌いだったわけではなく、元素の周期表を眺めたり、自然について考えたりするのは好きだったんです
――わずかに興味はありながら、実際にのめり込んだのは大学から大学院にかけてだったと。
あやか:そうですね。妄想するのが好きというか、物語を考えるのが昔から好きなんです。一定の条件下で登場人物がそれぞれ、何かの目的に向かって動いていくような世界ですね。
物理学も似ていて、物質と物質に相互作用が起きることで現象が生まれますし、例えば、「晴れ空だったはずが、いつのまにか雨になる」といった天気の変化にも、ストーリーがあるんです。その構造が面白くて、嫌いにならずに取り組むことができました。数式があまり得意ではなかったので、物理や化学の勉強をするときには、すべてストーリー仕立ての文章に置き換えて理解していました。それが、今の発信にもつながっているんだろうなと思います。
電子レンジで離乳食の投稿にトンデモ返答が
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――お子さんは、3人いらっしゃると聞きました。
あやか:上の双子が小学4年生、下の子が小学1年生です。「あやかさんの子どもだから理科が得意なんでしょう」と言われますけど、そんなことはありません。双子の片方は理数系が得意で文系が苦手ですが、もう片方の子は国語や図工が好きで「算数なんて滅べばいい」と言っています(笑)。三番目の子はまだ小学1年生なので、これからどうなるかですね。
――現在の発信活動のきっかけは、双子が幼かった当時の「双子育児のアカウント」だったそうですね。
あやか:はい。イラストエッセイ形式で、双子育児の悩みを解決するような発信をしていました。双子あるあるだったり、お出かけのコツだったり。当時は子どもたちもまだ小さかったので、離乳食について投稿することも多かったんですが、それが、物理学の内容を発信するきっかけになりました。
――きっかけとなったのは、どのような投稿だったんでしょう?
あやか:あるとき「電子レンジで離乳食を作っています」とInstagramのストーリーズに投稿したら、「電子レンジの電磁波は子どもに悪影響だから使わないほうがいいですよ」とメッセージが来たんです。温めた離乳食に「電磁波が残る」と明らかに間違ったことが書かれていたので、「電磁波は残りませんよ」と改めてストーリーズで伝えたら、たくさんの反響が届きました。
物理学の知識があれば、電子レンジの安全性は理解できるはずなんです。でも、実際には「悪影響がある」と誤解されている。それに疑問を感じて、SNSで「電磁波」と検索してみたら、いわゆる「エセ科学」と言っていいような情報がいくつも出てきて、ビックリしました。
「電子レンジでがんになる」という情報を見たのは、覚えています。他にも、電磁波に限らず「5Gは殺人兵器」「電気毛布で不妊になる」など、とにかくキリがなくて。「このままではいけない」という気持ちに駆られて、2023年の夏に現在のアカウントを作りました。

