「屁理屈をこね始めたら誰も止められない」
家族からそう紹介された患者さんを担当することになった、新人看護師だった頃の筆者の嫌な予感は、すぐに現実となったのでした。
「誰も止められない」と言われた患者さん
ある日、Fさんという男性患者さんが入院してきました。
認知機能に問題はありません。ただ、ご家族からは
「屁理屈をこね始めたら誰も止められません」
と聞いていました。
実際、奥様も
「私でも無理です」
と苦笑い。
私は担当看護師になった時から少し嫌な予感がしていました。
手術後に始まった大騒動
Fさんは大きな手術を受けました。
本来なら術後しばらくは、傷口が開かないようにすることや、点滴が抜けたり転倒したりする危険があるので患者さんの安全のために、ベッド上で安静に過ごさなければならない時間でした。
ところがFさんは完全に覚醒し、ベッドから下りようとしたり、病棟内を歩き回ろうとしたりと大騒ぎ。
暴れてかえってけがをする恐れがあったことから、医師の許可を得て「歩くのは危険だが、車椅子上で過ごすのは可」という特別な対応を取ることになりました。
ところが、それでもFさんは納得しません。
「車椅子も嫌だ。好きなように歩かせろ」
と安静そのものに強い不満を示し、不機嫌な様子が続いていました。
そんな中、その日のうちに事件が起きます。
付き添っていた奥様が置き手紙を残し、帰ってしまったのです。
そこには、
「私はこの人をもう見たくありません」
と書かれていました。
電話をしてもつながらず、私は夜勤者が来るまで暴れ回り暴言を吐くFさんに一人で対応することになりました。

