【2026年夏・新宿】SOMPO美術館『山口華楊展』レポート!花鳥画家が生涯描き続けた「生命の美」とは

③《幻化》ーーー華楊の画家人生の集大成

年月と共に華楊の表現はいよいよ円熟味を増していく。彼の画業と展覧会のクライマックスを飾るのが、華楊80歳の傑作《幻化》である。

山口華楊 《幻化》山口華楊 《幻化》 1979年 紙本彩色 155.7 ×171.1cm SOMPO美術館

「幻化」とは、「すべてのものに実体はない」という意味の仏教用語である。叢を構成する植物の一つ一つは、葉の形が描きわけられている。が、一歩離れると輪郭が溶け、微妙な階調を持った緑一色の背景となる。

そんな背景のもと、2匹の狐が円環を描くように追いかけっこをしている。柔らかくスラリとした肢体を持つ狐は、ほのかに淡い光をまとっているようで、気高さすら感じられる。現実の光景、というよりも、月明かりの中で見た幻想のようにも思える。

華楊は、晩年、著書『絵がかきたうて』の中でこう述べている。自分のモチベーションの源は、「生きているもののみが持つ生命感、生命の美である」(山口華楊著『絵がかきたうて』日本経済新聞出版社/1984年/156~157頁)と。

華楊は、若い頃に師・五雲から受けた「写生」を基礎とする教えを終生大事にし続けた。が、彼は常に目に見えるがままをそのまま絵画にしたわけではない。モチーフと向き合い、観察する中で掬い取った「生命感」や、「生命の美」への感動を絵として表現してきたのではないだろうか。

華楊が描く生命は有限で儚い。だからこそ、美しい。

そんな生命への賛歌こそが、華楊の作品群であり、この《幻化》は60年以上にわたる画業の一つの到達点と言えるのかもしれない。

山口華楊の展覧会が東京で開催されるのは、実に27年ぶりとなる。中でも、SOMPO美術館が所蔵する《葉桜》、《猿》、《幻化》は華楊の前期・中期・後期をそれぞれ代表する作品だ。

ぜひ、この機会に華楊が生涯にわたって見つめ、描き続けた生命の美に触れて欲しい。

展覧会情報

会期:2026年7月11日(土)〜8月30日(日) 
会場:SOMPO美術館(新宿区西新宿1-26-1)
休館日:月曜日
観覧料金:
・当日一般 1,600円ほか
・25歳以下 1,100円
・小中高校生 無料
・障がい者手帳をお持ちの方 無料

山口華楊展 公式サイト

配信元: イロハニアート

提供元

プロフィール画像

イロハニアート

最近よく耳にするアート。「興味はあるけれど、難しそう」と何となく敬遠していませんか?イロハニアートは、アートをもっと自由に、たくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディアです。現代アートから古美術まで、アートのイロハが分かる、そんなメディアを目指して日々コンテンツを更新しています。