東京大学の研究チームが行った最新の検証により、犬の〝うれしいときの顔〞には共通の傾向があることが明らかになりました。飼い主さんとの関係や進化とも深くかかわる、犬の表情の秘密を獣医学博士の清川泰志先生に聞きました。
「うちのコ、なんだかうれしそう」。そんな飼い主の直感を科学的に分析
犬といっしょに暮らしていると、「今うれしそう!」「楽しそうだな」と感じる瞬間がよくあるはず。こうした飼い主さんの感覚はこれまで〝なんとなく〞語られることが多かったのですが、その印象を科学的に検証したのが今回の研究です。犬にとってポジティブな刺激を受けたときの顔の動きを動画で記録し、顔の筋肉の変化を客観的に分析。その結果、特定の状況で表れやすい〝表情のパターン〞があることがわかってきました。
この研究の新しさは、感情そのものを決めつけるのではなく、「どんなときにどんな顔になるのか」をデータで明らかにしたところ。飼い主さんが感じていた〝うれしそう〞に、科学的な裏づけが加わったのです。
おやつを見せる/おもちゃを見せる/何も見せない。3パターンで1分間、表情の変化をチェック
家庭で暮らす犬30頭を対象に、犬が大好きな「おやつ」や「おもちゃ」を見せる場合と、何も見せない場合の3つのパターンでオスワリ&マッテをさせて、それぞれの表情を1分間ずつ動画で記録。撮影した映像を、顔の筋肉の動きを細かく読み取って分析する表情検知システムDogFACS(※)で分類しました。
※人は表情を全体の印象や感情でとらえがちですが、それでは個人差や思い込みが入り正確な比較ができません。そこで、顔の筋肉の動きごとに細かく分類し〝どの部位がどう動いたか〞を記録する「DogFACS」が開発されました。これにより犬の表情を誰でも同じ基準でとらえられるようになり、科学的な研究や比較が可能になりました。

①口が開く
口元がゆるみ、自然に開く動き。リラックスや期待の高まりと関連する可能性がある。

②あごが下がる
下あごがストンと落ちるような変化。口の開きと連動して表れることが多い。

③舌を出す
軽く舌を出すしぐさも頻繁に観察された。興奮や期待のサインのひとつと考えられる。

④耳が内側に寄る
耳の向きが内側へと内転。注意や関心が対象に向いている状態を示す可能性がある。
オスは〝じわじわ長く〞メスは〝パッと強く〞。オスとメスで表情の出方が違った
さらなる解析によると、オスは好きなものを見たときのリアクションが長く続く一方で、メスは最初に強く出るものの、比較的早く落ち着くという性別差による傾向も見られました。
もちろん、犬によってもともとの表情の出方には差があるため、「この表情=うれしい」とは言いきれませんが、愛犬のふだんの様子と比べてどう変化しているかに注目するなど、日常のなかでの違いに目を向けることが、愛犬の表情を理解する近道といえそうです。
