「口の中に治らない口内炎がある」そんな小さな違和感から、自ら複数の病院を渡り歩き「これはがんかもしれない」と気づいて動いたことが、早期発見につながりました。みくみさんは、コロナ後遺症からようやく仕事に復帰した矢先の2023年末に舌がんステージ1の診断を受け、その後も頸部リンパ節転移、散在性再発という試練が続いた。強力な化学療法と放射線治療を乗り越え、2024年12月に治療終了しました。「食べるの大好き」を名乗るほどの食いしん坊が、食べることすら叶わない日々をどう生き抜いたのか。当時の体験を語っていただきました。
みくみさん(32歳・元客室乗務員)
2022年末から口の中の違和感が続き、自ら複数の歯科・医療機関を受診。2023年12月に舌がんステージ1と診断される。以降、2024年1月に舌がん切除手術、4月に頸部郭清術(頸部リンパ節摘出手術)、7〜12月に化学療法・分子標的薬・放射線治療を受け、2024年12月に治療を終了。現在は経過観察中。Instagramにて治療経過や日々の気づきを発信している。【InstagramなどSNSアカウントURLを挿入】
口の中の「治らない違和感」から舌がんステージ1の診断まで——気づきと受診の経緯
編集部
最初に体の異変に気づいたのはいつ頃でしたか?
みくみさん
2022年12月頃、舌の側面に口内炎のような痛みができました。かかりつけの歯科でステロイド系の塗り薬をもらい、一時的には良くなりますが、また同じ場所に口内炎ができるということを繰り返していました。その後、別の歯科で「扁平苔癬(へんぺいたいせん)」と診断されました。扁平苔癬とは、皮膚や口腔粘膜に慢性的な炎症を起こす難治性疾患です。症状が軽快と再燃を繰り返すことが多く、治療には長期間を要する場合があります。塗り薬やスプレー保護剤、サプリなどを処方いただき、頻繁に通院しましたが、症状が落ち着いたりまた出て来たりを繰り返すだけで、全然良くなりませんでした。
編集部
がんの可能性を疑われたとのことですが、ご自身で調べることもしたのですか?
みくみさん
口内炎が治らないことが気になってインターネットで調べました。そうすると、口内炎が長引く場合にがんの可能性があることや、扁平苔癬がまれにがんに移行することがある、という情報が出てきて疑い始めました。「これはがんかもしれない」という感覚で、頭頸部に詳しそうな歯科を自分で探して受診しました。その後、大学病院を紹介していただき、生検(組織の一部を切り取って調べる検査)を受けたところ、2023年12月に舌がんステージ1と診断されました。
編集部
告知を受けた時はどのようなお気持ちでしたか?
みくみさん
「がんかもしれない」と思いながら受診していたので、いきなりショックという感覚ではありませんでした。むしろ、1年近く治らず悩んでいたので、、「ステージ1なら手術して取ってしまえば大丈夫だろう」と、ようやく治せると思ったのかもしれません。
手術・リンパ節転移・再発……繰り返す試練と向き合った2024年
編集部
実際には、どのような治療を受けられたのですか?
みくみさん
2024年1月に東京医科歯科大学病院(現在の東京科学大学病院)で全身麻酔のもと手術を行いました。1〜2時間ほどの手術で、6日間入院しました。舌の右側面の一部を切除したので、術後は痛みと食べづらさがあり、発音にも苦労しました。「ミクミ」という自分の名前が言えなかったです。しかし、毎日しゃべり続けているうちに、いつの間にか普通に話せるようになっていました。
編集部
その後、リンパ節への転移が分かったとのことですが、どのように発覚したのですか?
みくみさん
術後1〜2ヶ月ほどして、首がポコポコしていることに自分で気づいて先生に診ていただいたところ、複数の頸部リンパ節に転移していることが分かりました。2024年4月に頸部郭清術(頸部のリンパ節を周囲の組織ごと摘出する手術)を受けました。手術時間も1回目より長く、「笑顔が作れなくなる可能性がある」「顔が歪む可能性がある」というリスクの説明もあって、手術前は怖かったです。術後すぐは顔の歪みがありましたが、先生が神経を丁寧に温存してくださったおかげで、今ではほとんど目立たないくらいに元に戻り、問題なく笑顔も作れるようになりました。
※舌がんはほかの口腔がんと比べてリンパ節転移が起きやすい特徴があります。腫瘍の深さや性質によっては、初期ステージでも術後に転移が見つかることがあり、定期的な経過観察が重要とされています。
編集部
7月には散在性の再発・転移が発覚したとのことですが、その時の経緯を教えてください。
みくみさん
頸部郭清術から2ヶ月ほどで、喉の下あたりがボコッと腫れてきたことに気がつきました。最初は首の手術後のむくみかと思っていたのですが、舌の付け根を触ると何か硬い気がしたこともあり、先生に症状を伝えたところ、これは怪しいとなって検査をしました。その結果、複数の部位に散らばるような形で再発・転移が起きていること(散在性再発)が分かりました。がんの進行が早いと判断され、すぐに化学療法と放射線治療の方針が決まりました。放射線治療への怖さがあり、セカンドオピニオンも受けたのですが、最終的に国立がん研究センター中央病院で治療を受けることにしました。そこでは薬の種類や治療の順序について、より自分に合った方針を選ぶことができ、安心して治療に臨むことができました。

