「いつもの便秘」が病気のサインに!?医師が教える、見逃してはいけない便通の変化と受診目安【医師コラム】

「いつもの便秘」が病気のサインに!?医師が教える、見逃してはいけない便通の変化と受診目安【医師コラム】

こんにちは、内科医の橋本将吉(ハシモトマサヨシ)です。
突然ですが、質問です! 皆さまは、毎日の便通についてどれくらい意識を向けているでしょうか? 便秘や下痢といった便通のトラブルは、日々の体調管理の中でもつい後回しにされがちです。実際、便秘や下痢に悩む日本人は約3人に1人といわれるほど多く、こうしたお悩みを抱えた方は決して少なくありません。しかし、あまりに身近な症状だからこそ注意が必要です。「昔から便秘だから」「おなかがゆるい体質だから」と自己判断で片付けてしまうと、その背後にある重大な病気を見逃してしまう危険があります。実際、日常的な便通の乱れが、腸だけにとどまらず、脳や心臓、さらには全身にまで悪影響を及ぼす病気のサインであることも、決して珍しくありません。

そこで今回は、様子を見てもよい体質的な便通の乱れと、注意が必要な便通トラブルのサイン、そして放置することで招く深刻なリスクについて、わかりやすく解説していきます。

このコラムを書いたのは…

監修/内科医 橋本将吉 先生(西新宿セルフライフ内科クリニック院長)
株式会社Gift Circle(リーフェグループ)代表取締役。西新宿セルフライフ内科クリニック。内科・総合診療・予防医学を専門とし、患者様の生活習慣に寄り添った診療をおこなう。YouTube「ドクターハッシー/内科医 橋本将吉」では、医学知識を一般向けにわかりやすく発信している。

様子を見てよい「体質的な便通の乱れ」とは?

「いつもの便秘」が病気のサインに!?医師が教える、見逃してはいけない便通の変化と受診目安【医師コラム】

便通トラブルといっても、その内容はさまざまで、様子見でも問題のないものから、注意が必要なものまで幅があります。まずは、様子を見てもよい「体質的な便通の乱れ」から見ていきましょう。 

便通には個人差があり、毎日お通じがなくても問題のないケースは珍しくありません。一般的には、排便の回数が週3回以上あり、便の硬さや量がいつもと大きく変わらず、トイレで強くいきまなくても自然に出せる状態であれば、おおむね正常な範囲と考えられています。

例えば、もともと2〜3日に1回のペースでお通じがあり、それが何年も変わらず続いている場合や、緊張する場面になるとおなかがゆるくなりやすいという傾向が、学生時代からずっと変わらず続いている場合などは、いわゆる「体質的な便通の乱れ」と考えられます。

こうしたケースの多くは、生活習慣を見直すことで改善が期待できます。具体的には、野菜や海藻、きのこ類などに含まれる食物繊維や、水分の摂取量を増やすこと、ウォーキングなどの適度な運動を習慣にすること、そして毎朝決まった時間にトイレに行くなど、排便のリズムを整えることが基本的な対策となります。

また、検査をしても腸に明らかな異常が見つからないにもかかわらず、便秘や下痢、あるいはその両方を繰り返してしまう「過敏性腸症候群(IBS)」という病気もあります。これは決して珍しい病気ではなく、ストレスや生活リズムの乱れがきっかけとなって起こることが多く、医学的に認められた疾患です。「気のせい」や「神経質なだけ」ではありません。症状が比較的軽く、日常生活に大きな支障が出ていなければ、まずは生活習慣の改善から始めてみましょう!

とはいえ、こうした「いつも通りの症状」がずっと続いている方の中にも、知らないうちに様子が変わってきている方は少なくありません。問題なのは、その変化に自分では気付きにくいという点です。次の項目では、そうした変化を放置することで、体にどのようなリスクが生じるのかを詳しく見ていきましょう。

こんな症状があったら要注意!早めに受診したいサイン

「いつもの便秘」が病気のサインに!?医師が教える、見逃してはいけない便通の変化と受診目安【医師コラム】

それでは、実際にどのような変化があれば注意が必要なのか、具体的に見ていきましょう。ここでまず大切なのは「以前と比べて何がどう変わったのか」という視点です。長年の便秘や下痢でも、その性質が変化したときは、消化管の病気が潜んでいる可能性があります。以下のような症状が見られる場合は、一人で抱え込まず、早めに医療機関に相談してみてください。 

1、便に血が混じる・黒いタール状の便が出る

便に赤い血が混じっている場合、痔が原因であることも多いのですが、それだけで判断するのは危険です。大腸がんや大腸ポリープ、あるいは大腸の粘膜に炎症が起こる潰瘍性大腸炎が原因で出血していることもあります。

また、便全体が真っ黒で、どろっとした粘り気のある状態になっている場合も注意が必要です。これは、胃や十二指腸など、肛門から離れた場所で出血が起き、その血液が腸の中を進む間に消化されて黒く変化したことが疑われます。体の中で出血が続いているサインであり、速やかな受診が必要です。

2、最近になって便通の様子が変わった

「もともと便秘がちだったが、最近になってさらにひどくなった」
「便秘と下痢を交互に繰り返すようになった」
「便の太さが、以前は普通だったのに、最近は鉛筆ほどに細くなった」


こうした変化を放置しておくのは危険です。これは、腸の中に何らかのできもの(ポリープやがん)ができ、便の通り道が狭くなっている可能性があります。

特に40〜50代以降になってこうした変化を感じるようになった場合は、念のため大腸の内側を直接カメラで観察する「大腸内視鏡検査」を受けておくと安心です。早期の段階で見つかれば、大腸がんは治療しやすい病気でもあります。

3、腹痛・腹部の張りが強い、または長く続く

強い腹痛や、おなかがガスでパンパンに張ったような感覚が何日も続いているときは、要注意のサインです。これは、腸の通り道が完全に、あるいは部分的に詰まってしまう「腸閉塞」が原因になっていることがあります。腸閉塞が起こると、便だけでなくガスも外に出にくくなるため、おなかの張りや強い痛みとして現れるのです。

また、腸に慢性的な炎症が起こる「クローン病」や「潰瘍性大腸炎」といった病気が背景にあることも考えられます。これらは免疫の働きの異常によって、腸の壁に炎症が繰り返し起こる病気で、若い世代でも発症することがあります。

市販の鎮痛薬や整腸剤で一時的に痛みが和らいだとしても、それは症状を抑えているだけで、原因そのものが解決したわけではありません。おなかの張りや痛みが長引く場合は、原因を突き止めるための検査を受けることが大切になります。

4、体重が急に減った、食欲がない

特に食事制限やダイエットをしているわけでもないのに、数カ月で体重が大きく減っている場合は要注意です。便秘や下痢といった便通の異常に、原因不明の体重減少が重なっているときは、消化器系のがんをはじめとする重い病気が隠れている可能性があります。

例えば大腸がんでは、がん細胞が腸の中で栄養を奪いながら増えていくため、本人が普段通りに食事をしていても、体重が徐々に落ちていくことがあります。同時に、腫瘍によって腸の通り道が狭くなることで、便秘や便の細さといった便通の変化が現れることも少なくありません。

つまり「便通の乱れ」と「体重減少」は、別々の症状ではなく、同じ病気から起きている一連のサインである可能性があるのです。このように、便通の変化と体重減少が同時に起きている場合は、早めに医療機関で検査を受けるようにしましょう!

5、発熱や倦怠感が伴う

下痢や腹痛に加えて熱が出ている場合、細菌やウイルスによる腸の感染症(食中毒や腸炎)が考えられます。また、発熱が続く場合は、クローン病や潰瘍性大腸炎のような炎症性の病気が活動している可能性もあります。症状が数日以上続く場合や、38度を超えるような高熱が出ている場合は、内科または消化器科を受診しましょう。

6、貧血の症状がある

立ち上がったときにめまいがする、ちょっと動くだけで動悸がする、顔色が悪いと指摘されるなど、貧血のような症状が便通トラブルと同時に起きている場合も注意が必要です。これは、腸のどこかで自分では気付かないほど少量の出血が、長期間にわたって続いていることが原因かもしれません。血液検査によって貧血の有無や程度を確認し、出血源を調べる精密検査が必要になります。

これらのサインが一つでも当てはまる場合は「年齢のせいかな」「体質だから」と自己判断せず、一度医療機関で相談してみることをお勧めします。これらの症状を放置すれば、大腸がんの発見が遅れて進行してしまうこともあります。

また、腸が詰まる腸閉塞によって命に危険が及ぶこともあれば、いきみによる血圧上昇が脳卒中や心筋梗塞の引き金になることも珍しくありません。さらに、痔の悪化や慢性的な貧血、免疫力の低下による全身の不調にもつながりかねません。便通の乱れは、決して「おなかだけの問題」ではないのです。 

配信元: 介護カレンダー

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