少し動いただけで異常にのどが渇く、高齢の家族があまり水分をとらず脱水症状が心配と感じたことはありませんか。脱水症状は真夏の炎天下だけでなく、室内で過ごしているときや体調不良のときなど、日常のさまざまな場面で起こります。のどの渇きがはっきりしないまま進むこともあるため、尿の色やお口の乾き、だるさなどの小さな変化に気付き、早めに対処することが、ご自身やご家族の健康を守ることにつながります。
この記事は、脱水症状とはどのような状態か、見逃したくない初期のサイン、適切な対処法や予防のポイントを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
脱水症状の主なサイン

脱水症状とはどのような状態ですか?
脱水症状とは、身体から水分と塩分(電解質)が失われ、補給が追いつかず、体内の水分量が不足した状態です。身体の半分以上は水分で、体温調節や栄養の運搬、老廃物の排出などに関わります。健康な状態では、飲食で摂取する水分量と、汗や尿、呼吸などで失われる水分量のバランスが保たれています。失われる水分量が摂取量を上回ると、体液のバランスが崩れます。脱水は、水分の不足が中心となるタイプ、ナトリウムなどの電解質の不足が目立つタイプ、水分と電解質が同じ程度に失われるタイプに分けられます。いずれも放置すると臓器に負担がかかり、深刻な健康被害につながることがあります。
脱水のときにはどのような症状が現れますか?
脱水症状は、失われた水分量や重症度によって変わります。軽度から中等度の場合は、強いのどの渇き、お口のなかの乾燥、疲労感、だるさ、めまいや立ちくらみなどがみられます。体内の水分を保つために腎臓が働くため、尿の量が減る、尿の色が濃くなることも特徴です。脱水が進むと、血液中の水分量が減り、全身に血液を送る働きに負担がかかります。手足の筋肉がつるこむら返りが起こることもあります。重度の場合は、脈が速く弱くなる、血圧が低下する、頭痛や吐き気が出る、意識がもうろうとするなどの症状が現れ、命に関わることがあります。
見逃しやすい初期のサインを教えてください
脱水の初期段階では、のどの渇きがはっきりせず、気付かないうちにかくれ脱水になる場合があります。見逃しやすいサインは、尿の回数が減る、尿の色が普段より濃い黄色や茶色っぽくなることです。お口のなかがネバネバする、唾液が飲み込みにくいと感じることもあります。
脱水が起こる原因と対処

脱水はどのようなときに起こりやすいですか?
脱水は、身体から出ていく水分が増えるときと、身体に入る水分が減るときに起こりやすいです。暑い環境での作業や激しいスポーツによる大量の発汗、感染性胃腸炎などによる激しい下痢や嘔吐、高熱による発汗は、短時間で水分と塩分を失う原因です。利尿薬や下剤の使用で、尿や便として排出される水分が増えることもあります。身体に入る水分が減る場面としては、仕事や運動に集中して水分補給を忘れること、年齢を重ねてのどの渇きを感じにくくなり、飲む量が減ることが挙げられます。トイレの回数を減らしたいという理由で水分を控えることも一因です。
脱水が疑われるときはどう対処すればよいですか?
脱水のサインに気付いたら、まず安静にし、身体への負担を減らしてください。暑い場所にいる場合は、涼しい室内や日陰へ移動します。意識がはっきりしていて自力で飲み込める場合は、水分と塩分を少しずつ補給します。一度に大量に飲むのではなく、数回に分けてこまめに飲むことが大切です。下痢や嘔吐、大量の発汗がある場合は、水だけでなく経口補水液などで電解質も補います。ただし、自力で水分が飲めない、飲んでもすぐ吐く、意識がぼんやりしている場合は、無理に飲ませると気道に入る危険があります。経口での水分補給が難しいため、すぐに病院を受診してください。
経口補水液と水やお茶はどう使い分けますか?
水や麦茶などは、日常生活でこまめにのどを潤す水分補給に適しています。一方、大量に汗をかいたときや、下痢や嘔吐で体液を失ったときは、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。このような場面で水やお茶だけを大量に飲むと、血液中のナトリウム濃度が薄まり、水分が身体に保たれにくくなることがあります。大量に汗をかいたときや体調不良による脱水時には、水分と塩分などの電解質、糖分が適切に配合された経口補水液が適しています。スポーツドリンクも塩分や糖分を含みますが、製品によって配合に差があります。明らかな脱水症状がある場面では経口補水液が適しています。

